研究概要 |
研究の目的ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、難治性がんの治療法として期待される。本研究では、BNCT実用化に向け切望されている、様々ながんに対する特異的で高導入効率をもつホウ素製剤の開発を行う。また導入率を高めるために開発中の多量体ホウ素化合物に腫瘍標的ペプチドを結合させた全く新しいタイプのホウ素薬を作製する。 実施計画に基づき以下の実験を行い、同述のような成果をあげた。 悪性脳腫瘍のうち膠芽腫に多く発現しているEGFRvIIIに特異的に結合するペプチドを、ペプチドライブラリーからスクリーニングした。我々が有する、異なる数十種類の蛍光標識ペプチドを同時に合成する技術を用いて、多数のペプチドを合成し、EGFRvIIIを強制発現させたヒト悪性神経膠由来株化細胞U87△EGFRと反応させ、特異的に結合するペプチドの網羅的探索を行ない有用ペプチドの同定に成功した。 我々は11個のポリアルギニン(11Argまたは11R)からなる細胞膜通過ペプチドを開発し、様々な生理活性物質を細胞内に導入してきた実績をもつ(松井ら,J Neurosci 21:6000, 2001;野口・松井ら,Nat Med 10:305, 2004;道上・松井ら,J Biol Chem 280:8285, 2005;道上・松井ら,FEBS Lett 579:3965, 2005)。この11ArgのC末端にNpys (3-nitro-2-pyridinesulfenyl)化したシステインを付加し、BSHのSH基の間でジスルフィド結合を生じさせることにより共有結合させ、このBSH-11Rの細胞内導入に成功した。この結合反応を用いて、スクリーニングで選定した悪性脳腫瘍標的ペプチドと11RをマルチBSHに結合させる事にも成功し、これを利用してBSHをがん細胞内に導入できる事を証明した。
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