研究課題/領域番号 |
24390298
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
石渡 喜一 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 研究部長 (50143037)
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研究分担者 |
日浦 幹夫 法政大学, スポーツ健康学部, 教授 (10327918)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グルタミン酸受容体 / ポジトロンCT / 核医学 / 被曝線量 / 脳神経疾患 |
研究概要 |
高齢化社会における認知症やパーキンソン症候群を初めとする様々な脳疾患の診断・病態解明、それらの治療評価法や治療薬の開発等の研究に、ポジトロン断層撮影法(PET)等による分子イメージングに大きな期待が集まっている。代謝型グルタミン酸受容体1型サブタイプ(mGluR1)を画像化する新規開発プローブ[^<11>C]ITMMのファーストインヒューマン研究として、本年度は、成年男性健常者で[^<11>C】ITMM-PETの安全性と有効性、被曝線量評価を行い、mGluR1を計測できることを明らかにし、次年度以降に加齢効果や性差、更に運動障害を来す変性疾患へ応用する。 安全性評価:PET検査に用いる[^<11>C]ITMMの投与薬物量は極めて少量であり、動物における毒性試験のデータから安全係数を十分とって投与量を設定した。しかし、予期せぬ副作用が無いことを慎重に確かめるため、下記のプロトコルにより、成人男性健常者9名(21-27歳)において臨床症状、理学所見、血液検査による副作用調査を実施し、PET検査の安全性を確認した。 有効性評価:5名の健常者に[^<11>C]ITMM投与後、脳で90分のダイナミック撮影を実施し、同時に経時的動脈採血及び血漿代謝物分析をして入力関数を得た。ヒトでの代謝はげっ歯類に比べて遅く、HPLC分析では投与後60分で60%が[^<11>C]ITMMとして血漿中に存在し、水溶性の代謝物が2成分検出された。尿中への放射能の排泄は投与量の13%程度で有り、HPLC上98%が水溶性の1成分として検出された。脳の各部位に置いた関心領域に対して非線形最小二乗法を用いた2組織3コンパートメント(3コンパートメント4パラメータ、3C4K)モデル解析を適用した。[^<11>C]ITMMのmGluR1結合を反映する分布容積V_Tは、小脳が最大で2.6、以下視床1.1、側頭葉0.9、前頭葉0.7、頭頂葉0.7、後頭葉0.6、線条体0.5、橋0.5の順で、報告されているmGluR1のインビトロ測定の受容体密度と良く一致していた。 [^<11>C]ITMM-PETによりヒト脳のmGluR1を計測できることが確認された。 被曝線量評価:4名の健常者に[^<11>C]ITMMを投与した時のMIRD法による内部被曝量は、マウスでの評価と同様に膀胱での被曝線量が最大で13.2μGy/MBqであった(マウス評価11.9μGy/MBq)。多くの臓器での値は概ねマウスからの推定値に相当したがヒトの方が高い傾向に有った。実効線量もマウスの3.4μSv/MBqに比べ46μSv/MBqと高めに評価されたが、この数値は臨床検査としては十分安全であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究者の所属機関は2013年6月に新施設に移転し、新しいPET-CT装置が導入される。従って、[^<11>C]ITMMの初年度の研究は、初期臨床試験としての安全性と有効性の評価と被曝線量評価に限定した。移転後に新しいPET-CT装置により次の研究を進める計画であり、その意味で初年度の研究は、予定通り達成し、時間的余裕はあったがそれ以上は進めなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新しいPET-CT装置により、健常者の脳の[^<11>C]ITMM-PET計測及び被曝線量評価を追加する。初年度の成人男性に成人女性を加えて性差を、また高齢者健常者での測定により、加齢の影響を検討する。次いで、運動障害を来す変性疾患、主にパーキンソン病を対象にして脳のmGluR1の病態生理学的研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
新しいPET-CT装置により、健常者男性及び女性の被曝線量評価を追加する。CTの情報により初年度より精度の高い評価が可能になる。次いで、脳の[^<11>C]ITMM-PET計測を健常若齢者男女及び健常高齢者男女で行い、[^<11>C]ITMMのmGluRl結合への性差及び加齢の影響を検討する。
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