研究課題
1. T細胞において、CD28刺激は短命で直接的な細胞傷害性をもつT細胞を生成するが、インテグリン分子であるVLA-4/5を介した刺激はメモリー形成能が高く、再刺激時にマルチファンクション性の高いT細胞を生成することを示した(Hosoi et al. Eur J Immunol 2014 in press)。2. 難治性食道癌に対するMAGE-A4特異的TCR遺伝子導入T細胞輸注療法の第1相試験を終了した。この結果を基に、シクロフォスファミドによる前処置を施し輸注細胞の生存性とマルチファンクション性を高めたプロトコールによる、同一のTCRを用いた難治性食道癌に対する医師主導治験を開始した。白血病/骨髄異形成症候群に対するWT1特異的TCR遺伝子導入T細胞輸注療法の第1相試験を開始した。さらに難治性固形癌を対象にNY-ESO-1特異的TCR遺伝子導入T細胞輸注療法の医師主導治験の準備を進めPMDAと相談を開始した(17th US-Japan Cellular and Gene Therapy Conference 2014、ESGCT annual meeeting 2013、SITC annual meeting 2013、日本がん学会総会2013シンポジウム、日本がん免疫学会総会2013シンポジウム他)。3. 内因性TCRの発現を抑制する独自開発ベクターを用いることにより、非自己のリンパ球に腫瘍特異的TCR遺伝子を導入し輸注療法を行うと、輸注細胞に腫瘍特異性を付与すると共に移植片対宿主反応(GVHD)の発生を抑えることが可能な事を示した(JSH international symposium 2013、日本がん免疫学会総会2013シンポジウム、日本免疫学会総会2013他)。4. ファージディスプレイライブラリーから得られた新規腫瘍特異的抗体を用いて、有効なキメラ抗原受容体(CAR)療法を開発した。
1: 当初の計画以上に進展している
T細胞の生体内運命の決定因子の解析が順調に進んだ。その知見を活用して、TCR改変T細胞輸注療法の臨床開発が進み、MAGE-A4特異的TCR改変T細胞輸注療法については、より輸注細胞の生存性とマルチファンクション性を向上するプロトコールによる新たな臨床試験を医師主導治験として開始した。また、他のTCR(WT1及びNY-ESO-1特異的TCR)についても、臨床試験の開始や医師主導治験の準備の開始をみている。これら、研究課題から得られた知見の臨床へのフィードバックは特筆に価する。また、非自己の細胞を用いるTCR改変T細胞輸注療法やファージディスプレイライブラリーによる新規腫瘍特異的抗体を用いたキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法の開発も進み、これらの成果を用いた研究を前倒しで行うことが可能になっている。
TCR改変T細胞輸注療法の臨床開発をさらに加速化して進める。特に医師主導治験の実施に注力する。また、非自己T細胞を用いたTCR改変細胞輸注療法、ファージディスプレイライブラリーを用いた新規腫瘍特異的抗体のスクリーニングが当初予定を上回るスピードで達成されているので、これらの成果を用いた研究を推進する。
T細胞応答の解析が効率的に行えた結果、研究の達成に必要な物品が当初予定より若干少なくなった。次年度使用額は全て物品費に使用する。これにより、より有効なT細胞輸注療法をさらに加速して開発することを可能とする。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 4件) 図書 (2件) 備考 (1件)
J Hematol Oncol.
巻: 7 ページ: -
10.1186/1756-8722-7-3.
J Transl Med.
巻: 11 ページ: -
10.1186/1479-5876-11-246.
http://www.shikuken.jp/