研究課題/領域番号 |
24390301
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 史顕 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20467426)
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研究分担者 |
戸井 雅和 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10207516)
上野 貴之 杏林大学, 医学部, 講師 (40452362)
佐治 重衡 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80446567)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乳癌 / microRNA / VEGF / 血管新生 |
研究概要 |
VEGFに制御されるmicroRNA(miR)を血管内皮側と腫瘍細胞側に分けて、探索した。 1) 血管内皮細胞内のVEGF依存性miRの探索 血管内皮細胞としてHUVEC細胞と乳腺正常血管内皮細胞(HMMEC)を使用した。これらの初代培養細胞にVEGF121、VEGF165を加えたものとコントロールの条件でのmiR発現プロファイルをmiRマイクロアレイで取得した。この解析で、miRの発現値(log2化した値)が4以上あるmiRに絞り込んだ後、その発現が2倍以上増加したmiR4種、2倍以上減弱したmiR3種を同定した。 2) 腫瘍細胞内VEGF依存性miRの探索 乳癌細胞株にはVRGFの主たる受容体のVEGFR1/2が殆ど発現していないことをRT-PCRで確認した。また、VEGFと相互作用があるとされる、NRP1/2の発現をみると、乳癌細胞株間に発現さがあることが判明した。また、VEGFの発現にも乳癌細胞株間差があり、腫瘍細胞が出すVEGFによるauto/paracline作用の程度にもさがある可能性があることが判明した。よって、VEGF陽性NRP1陽性細胞株(MDA-MB-231, Hs578T)を選択し、NRP1の下流にあるVEGF依存性miRの検索に絞って解析することとした。NRP1に対するshRNAをデザインし、レンチウィルスによるNRP1ノックダウン細胞株を上記2種の乳癌細胞株で作成した。その細胞株を使用したmiRアレイを次年度に予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初期の計画では、血管内皮細胞と乳癌細胞のどちらもに共通する、VEGF依存性のmiRを同定する予定にしていた。が、VEGFの受容体であるVEGFR1/2が血管内皮細胞には発現しているが乳癌細胞株にはほとんど発現していないこと、VEGFそのものの発現量に細胞間に差があり、それによる内在性VEGFによるauto/paracrineの影響が、細胞間で違うことが、H24年度にVEGF1/2、VEGFのRT-PCR、培養上清中のVEGF蛋白の発現をBio-plex法による定量で、明らかになった。それ故、血管内皮細胞内でVEGFR1/2存在下、内在性VEGF発現下でのVEGF依存性miRの同定と、乳癌細胞株での、VEGF-NRP1依存性のmiRの同定というように、分けて解析をする必要が出てきたためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度にVEGFとNRP1発現陽性のMDAMB231とHs578T細胞にNRP1に対するshRNAをレンチウィルスで導入した細胞を作製した。この細胞とコントロール細胞を使用して、以下の研究を行う。 1) VEGF-NRP1依存性のmiRの同定:抗VEGF抗体であるベバシズマブを投与した条件と非投与条件でのRNAを抽出し、microRNA発現プロファイルを取得し、NRP1発現細胞で変動し、NRP1ノックダウン細胞で変化しないmiRを同定する。 2) 1)で同定したmiRの機能を解析:レンチウィルスベクターシステムで、同定したmiRの発現ベクターとmiRのdecoy発現ベクターを作製し、gain/loss-of-function実験を行う。具体的には①細胞増殖能、②細胞周期、③アポトーシス、④細胞運動能、⑤血管新生誘導能に関する機能を調べる。 3) 2)で同定されたmiRに対する標的遺伝子の同定:miR標的分子予測アルゴリズムで2)で認められたmiRの機能に合致する標的分子を探索する。その分子の3’UTRのレポーターベクターを作製してmiRと標的分子の3’UTRの相互作用を証明する。 以上により、乳癌細胞株内のVEGF-NRP1依存性miRとその制御システムを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
NRP1に対するshRNA発現細胞株作製に時間がかかり、その細胞を使ったmicroRNAマイクロアレイ解析が次年度に行う事になった。その解析に必要な金額を次年度に使用する為に繰り越しさせた。 主に、平成25年度に終える予定であった、NRP1に対するshRNA発現乳癌細胞株を用いたmicroRNAマイクロアレイ解析に使用する予定。
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