研究課題/領域番号 |
24390303
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片野 光男 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10145203)
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研究分担者 |
大西 秀哉 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30553276)
中野 賢二 九州大学, 先端融合医療レドックスナビ研究拠点, 教授 (00315061)
田中 雅夫 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30163570)
小田 義直 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70291515)
野村 政壽 九州大学, 大学病院, 講師 (30315080)
中村 勝也 九州大学, 大学病院, 助教 (60585743)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Hedgehogシグナル / シグナルネットワーク / 治療標的 / 肺がん / 膵がん / 乳がん / 胆嚢がん / 癌悪性化 |
研究概要 |
本研究は、種々の癌腫において再活性化し治療標的としての応用が期待されているHhシグナル系ネットワークを形成しているシグナル系を見出し、Hhシグナル単独ではなく、Hhシグナルを考慮した新たな治療法を開発することを目的としている。当初計画に沿い、25年度の成果を記載する。25年度は、Hhシグナル系ネットワークを形成しているシグナル系の中で、癌悪性化に関与するネットワークを抽出し、治療標的となり得るかを検証する予定であった。 ①肺がん:Hhシグナル系の再活性化を確認した。新たに、悪性度の高いLarge Cell Neuroendocrine Carcinoma(LCNEC)において、TrkB/BDNFシグナル系の阻害剤が腫瘍縮小効果を持ち、再発予防の可能性があることをマウスの実験系で明らかにした(Anticancer Res 2013)。 ②膵がん:低酸素環境耐性膵癌細胞株を作成し、再酸素化させる実験系において、Hhシグナル系が膵がんの悪性度の亢進および転移、浸潤に関与する可能性を見出した(Cancer Sci 2014)。さらに、タンパク多糖体であるPSKが、低酸素環境においてHhシグナル系及びHIF-1a系を抑制することで、膵がんに抗腫瘍効果を及ぼしているというメカニズムを明らかにした(Cancer Lett 2013)。 ③乳がん:幹細胞のマーカーの1つであるCD24分子陰性細胞ではShhが亢進しており、その機序に、上流の転写因子が関与する可能性を見出し、解析中である(論文作成中)。さらにトリプルネガティブ乳癌において形態形成シグナルであるNotch4が治療標的となることを見出した(Anticancer Res 2014)。 ④胆嚢がん:Hhシグナル系が胆嚢がんの増殖、浸潤に関与し、新たな治療標的となる可能性を見出した(Cancer Sci 2014)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果で記載したように①Hhシグナル系ネットワークを形成しているシグナル系の中で、癌悪性化に関与するネットワークを抽出した(TrkB/BDNFシグナル系、Notch4シグナル系、CD24分子発現シグナル系)。②胆嚢がんにおいてHhシグナル系が新たな治療標的となることを見出した。③免疫賦活剤PSKがHhシグナル制御薬剤となりうることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
1)Hhシグナルネットワークを標的とした治療実験: 免疫不全マウス移植系を用いて、前年度に選別したHhシグナルネットワークのうち、効果および新規性の高いシグナルネットワークから、順次、ネットワーク阻害(シグナル阻害剤、低分子RNA干渉、遺伝子導入)による治療効果(増殖抑制、造腫瘍能、浸潤抑制、転移抑制、生存期間)を検証する。 2)移植腫瘍におけるHhシグナルネットワーク解析および組織病理学的解析: 治療による癌組織におけるHhシグナルネットワークの変化を中心に、特殊免疫染色などを組み合わせ組織病理学的に解析する。 3)Hhシグナルネットワークを標的とした腫瘍幹細胞療法の検証:癌組織における腫瘍幹細胞Hhシグナルネットワーク解析の結果に基づいて治療実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は、癌組織Hhシグナルネットワークマップ中より、免疫不全マウス移植系を用いて治療標的として検証可能な癌組織Hhシグナルネットワークを選別する予定であった。肺がんについては、達成出来たが、膵がん、乳がん、胆嚢がんでは時間的制約のため、実施出来なかったため、この実験に必要な研究費を26年度に繰り越した。 免疫不全マウス移植系を用いて治療標的として検証可能な癌組織Hhシグナルネットワークを選別するとともに、治療実験を行い、各種癌に対する治療法を検証する予定である。
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