研究課題/領域番号 |
24390304
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
三高 俊広 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50231618)
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研究分担者 |
谷水 直樹 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00333386)
市戸 義久 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (80452978)
水口 徹 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30347174)
平田 公一 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50136959)
吉川 大和 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (20274227)
須藤 亮 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (20407141)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 再生医学 / 細胞移植 / 肝幹・前駆細胞 / 組織形成 / マイクロRNA / 増殖因子 / 細胞外基質 / 肝再生 |
研究概要 |
本研究は、1)肝幹・前駆細胞を細胞ソースに移植する場合の肝細胞置換効率を上げる手法の開発 2)肝臓内在性幹・前駆細胞を活性化させることにより、肝再生を促進する手法の開発 3)成熟肝細胞相当の分化機能を有し、胆管を組み込んだ類肝組織の形成方法の確立、を主たる目的に研究を行っている。本年度は、2)内在性肝前駆細胞の活性化機序を中心に研究を行った。 ガラクトサミン投与によって出現するThy1陽性細胞の一部は肝幹細胞であるが、Retrorsine/PHモデル肝臓に移植しても既存の肝細胞と置換し長期生着することはなかった(Hepatology, 2013)が、内在性肝前駆細胞(SHPCs)の増殖を促進した。その活性は成熟肝細胞にはなく、また小型肝細胞にもなかったことから、Thy1陽性の肝幹・前駆細胞以外の細胞に活性があると考えられた。現在、Thy1陽性細胞移植により誘導されたSHPCsの増殖機序と、Thy1細胞がどのような機序でSHPCsの増殖を促進しているかについて検討している。 マウスにDDC食を投与して慢性的な肝障害を起こすと、duct様構造をとる小型の細胞がグリソン鞘域に増生する(DR: Ductular reaction)。我々は、DR近傍に胆管上皮細胞特異的転写因子であるSox9を発現する肝細胞が出現することを見出した。Mx1Cre:ROSAマウスにpoly(IC)を投与して成熟肝細胞をラベルして、DRを誘導するとLacZでラベルされたSox9(+)肝細胞が出現したことから、これらの前駆細胞は成熟肝細胞由来であると考えられた。さらにDDC食を与えたSox9-EGFPマウスからSox9(+)肝細胞をGFP(+)EpCAM(-)細胞として分離し培養すると効率よく肝細胞へ分化する一方、胆管上皮細胞への分化は限定的であった(J Biol Chem, 2014)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由)目標の一つである内在性幹・前駆細胞の活性化による肝再生を促進する手法の開発で重要な知見が得られたので、その研究に重点をおいたて研究を進めている。使用を予定していたLaser caption microscopyの設置が遅れたため、組織から分離したSHPCsからRNAを抽出してDNAchipによる網羅的遺伝子発現解析が遅れたこと、また肝幹・前駆細胞が分泌するexosome中のmicroRNAの網羅的解析を年度内に終わらせる計画であったが、解析が遅れていることなどもその一因である。
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今後の研究の推進方策 |
移植したThy1陽性細胞がどのような機序で内在性肝前駆細胞の増殖を促進するか、Thy1陽性細胞移植により誘導されたSHPCsがどのような機序で増殖しているかについて研究を進める。また、Thy1陽性細胞と同等な表面抗原を有する骨髄間葉系幹細胞や他の細胞を移植した時にも同様に内在性肝前駆細胞を増殖できるか否かについて検討する。またマウス肝障害モデルにおいて出現する肝前駆細胞の特性を解析する事により、in vivo及びin vitroにおける増殖・分化機序を明らかにする。それらの研究により、ドナー細胞による細胞置換とレシピエント細胞活性化による肝再生を促進する新たな肝疾患治療法の開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度中に肝幹・前駆細胞などが分泌するexosome中のmicroRNAの網羅的解析を行う予定で準備していたが、年度内に行うことができなかった。次年度に繰り越す金額の大部分はそのための解析費用とそれに付随する研究の費用である。 microRNA及び遺伝子発現の網羅的解析に係る費用に充当する予定である。また、解析終了後にそのデータを基に行う実験に係る物品費に計上する予定である。
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