研究課題
基盤研究(B)
膵癌は、特徴的な臨床症状が乏しいために早期発見が非常に困難で、また治療を行った場合でも再発率および転移率が高く極めて予後の悪い難治性癌である。これまでの研究から、膵癌の発癌・転移・再発には癌幹細胞(cancer stem cell)が関与すると言われており、膵癌幹細胞が転移や化学放射線療法に抵抗性を示すことが高い再発率を示す原因であると考えられている。本研究課題ではヒト膵癌で高率に見られる1st hitの遺伝子変異(KrasG12D)とさらに2nd hitの遺伝子変異(CDKN2A欠損)を導入した遺伝子変異膵癌モデルマウスを用い、膵癌幹細胞の特性解析を行う。さらに、2nd hitの遺伝子変異を導入した膵癌モデルマウスで見られる浸潤と肝転移に焦点を当て、浸潤性・転移性をもつ癌幹細胞を解析し、膵幹細胞、最初に癌ができる元となる膵癌幹細胞との関係を系譜的に解析し、増悪過程における特性変化の解明を試みる。本年度は膵癌幹細胞の機能解析として、in vivoでの1細胞からの腫瘍形成能の解析およびin vitroでの1細胞からのスフィア形成能の解析系を行った。マウス膵癌モデルマウスより分離した膵癌細胞を用い、細胞表面抗原を指標に選別し、96ウェルプレートにシングルセルソーティングした細胞を用いて、腫瘍形成能およびスフィア形成能のクローナルな解析を試みた。その結果、シングルセルからの腫瘍形成能のクローナルな解析法を確立した。また、スフィア形成能についてシングルセルからのクローナルな解析系を確立し、Pdx1+細胞に高いスフィア形成能を有する細胞が含まれることが明らかとなった。更に、このスフィアをばらばらにし、再度スフィア形成能の解析を行ったところ、1つの1細胞由来スフィアには複数のスフィア形成能を持つ細胞が含まれることから、スフィア中で癌幹細胞が維持され、自己複製により増幅する事が明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本園度は技術的な困難が予想されたクローナルな解析系を確立することが出来た。この解析法を用いることで、癌幹細胞を精度高く絞り込むことが可能となり、次年度以降の解析にも極めて強力なツールとなることから、当初の目標達成にむけ、おおむね順調に進展していると考えられる。
クローナルな腫瘍形成能を指標に癌幹細胞を特定する。特定した癌幹細胞のうち、肝転移能を持つ細胞と持たない細胞を明らかにすることを目指す。一方、スフィア形成過程を蛍光タンパク質により、細胞分裂像を視覚的に捉え、膵癌幹細胞の自己複製を明らかにすることを試みる。
当初の予定より、消耗品が安価に購入できたため端数が生じ、翌年度に繰り越した。繰り越した研究費は翌年度研究費と合わせて、消耗品費として使用する。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (14件)
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