研究課題
前年度までに本研究で同定した膵癌幹細胞を可視化するために、正常な膵幹細胞を標識するのに成功している膵幹細胞特異的に発現するタンパク質プロモーター下流に蛍光タンパク質DsRed2 を組み込んだマウスと膵癌モデルマウスを掛け合わせた。しかしながら、このマウスでは膵癌幹細胞を標識することが出来なかった。このことは、蛍光タンパク質発現トランスジェニックマウスの蛍光タンパク質遺伝子が組み込まれているゲノム領域が正常膵幹細胞ではオープンであるが、膵癌幹細胞ではサイレンシングを受けていることが想像されるが詳細は不明である。そこで本年度は別の膵幹細胞特異的に発現するタンパク質プロモーター下流に蛍光タンパク質EGFP を組み込んだマウスと膵癌モデルマウスを掛け合わせた。このマウスで膵癌幹細胞特異的に蛍光タンパク質を発現させることに成功した。実際にこのマウスよりEGFP陽性細胞、EGFP陰性細胞をそれぞれセルソーターにより分離し、正常マウス皮下に移植するとEGFP陽性細胞からのみ腫瘍形成が見られ、本研究で同定した細胞が膵癌幹細胞であることを直接証明する結果であった。このマウスが作成できたことで、当初計画である、膵癌幹細胞の特性の解析と細胞系譜解析を1細胞レベルで実施することが可能となった。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究成果から、本研究で同定した細胞が膵癌幹細胞であることを直接証明することができた。これにより、当初目標である、膵癌幹細胞の特性の解析と細胞系譜解析を1細胞レベルで実施することが可能となった。
これまでの成果において膵癌マウスモデルを用いて特定の遺伝子を発現する膵癌幹細胞を見出した。さらに膵癌幹細胞特異的に蛍光タンパク質を発現させ可視化するモデルマウスを作成した。今後、蛍光タンパク質陽性細胞をマウス皮下にシングルセル(たった1つの細胞)移植することで、腫瘍形成能を観察できる実験系を構築する。また、膵癌幹細胞をマウス脾臓内に移植することで肝転移能を評価する系を構築する。ングルセル移植によって形成されたXenograftをシングルセルレベルで植え継ぎを重ねることで、肝転移能を持っていなかった癌幹細胞から肝転移能をもつ癌幹細胞が生じることを明らかにする。
購入した抗体やサイトカイン等の消耗品が当初の予定より安価に購入できたため、物品費に余剰が生じた。購入した抗体やサイトカイン等の消耗品の購入に充てる。
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