研究課題/領域番号 |
24390308
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
大沼 健太郎 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 特任研究員 (50527992)
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研究分担者 |
巽 英介 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (00216996)
住倉 博仁 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 特任研究員 (20433998)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 人工心臓 / 駆動制御 / 生体計測 / 確率過程 / 相互引き込み |
研究概要 |
本研究では、生物の適応性と関係の深い確率論的アプローチと心拍にも見られる同期現象を応用することで自律的適応性を有し生体の制御系へ能動的に働きかける人工心臓制御の開発を目的とする。本年度は、これまでに構築した基礎的な制御設計と計測系および、それらを統合したVAD用駆動制御システムの最適化と動物実験に使用可能なシステム構築を目指して連続流、拍動流VADシステムそれぞれにおいておもに以下の項目を実施した。 (1)駆動制御システムの改良 アトラクタ選択モデルを応用した自律的制御制御法において、システムの挙動を決定づける評価関数に関してVADの流量補助機能を循環状態の変化や流入の吸い付き(外乱)に対して適応的に維持可能とするべく時系列的な変化をパラメータに加えることで最適化を行った。心拍の引き込み同期現象の応用に関して、先行研究における連続流VAD慢性動物実験での心拍変動解析から変動の低周波成分(LF)と左室拡張期末圧、容積の間で相関性が確認された。このことはこれまでに確認された拍動流VADにおける心拍の同期現象とあわせて相互引き込みにより生体の循環状態に能動的に作用し得る可能性が示唆された。いっぽう、これらの現象は慢性期に確認されておりその評価には慢性実験の実施が必要と考えられた。また、制御への応用にむけてリアルタイム心拍解析値の入力インターフェースの構築を開始した。 (2)左心補助模擬循環試験による評価と装置改良 開発中のシステムを左心補助模擬循環回路に接続し、拍動負荷における挙動を評価した。その結果、適応的な流量維持に関して目標流量に収束しないケースが確認されたため、VAD流量の平均区間と時間的応答性の観点からアルゴリズムを改良した。また、DCサーボモータを適用した拍動VADコントローラおよび、汎用モータドライバを用いた連続流VADコントローラを、実使用を想定して改良した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、各要素技術を統合した試作システムの構築を目的とし、可能であれば動物実験による評価開始を目指した。現在まで、最も基礎となる自律的制御機能を組み込んだ試作コントローラの構築と最適化を優先して実施し、模擬循環回路において試作装置を用いたVAD駆動試験を行い、改良に時間を要したものの拍動VADシステムは市販の血液ポンプを用いることで概ね動物実験に移行可能な状態に達した。連続流VADシステムにおいても適応的制御機能は目標を達した。いっぽう、研究規模を考慮し臨床用の埋め込みVADシステムではなく実験用試作ポンプの使用を予定していたものの慢性動物実験に使用可能な耐久性、溶血性能の確保と評価に時間を要した。また、心拍解析値のリアルタイム入力システムの構築とコントローラへの実装に時間を要しており、同期引き込み(相互作用)の制御アルゴリズムへの応用のための検討を次年度も引き続き行うこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
心拍解析のリアルタイム入力インターフェースの構築を早急に実施するとともに、連続流システムにおいては試作ポンプの改良を進めることと並行して、体外式遠心血液ポンプの応用も併せて検討することでハードウェア面の完成を目指す。そのうえで、これまでの検討から同期引き込み現象の応用には慢性実験による評価が不可欠であることが示唆されたことから、早急に慢性動物実験への移行を目指す。これにより、システム動作の妥当性評価とアルゴリズムの改良・最適化を実施するとともに、同期現象を応用した相互作用が生体に及ぼす影響に関して心拍変動解析、各血圧やmax dP/dtの指標から検討を行い総合的な提案手法の評価の実施を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、基礎となる自律的制御機能を組み込んだ試作コントローラの構築と最適化の実施を主とし、動物実験に関わる消耗品等での支出を生じなかったため物品費が見込みを下回った。同様に、データ整理などに補助を要しなかったため謝金を生じなかったため、次年度使用額を生じた。 次年度は、主として予定している制御用コントローラと血液ポンプからなる試験用ハードウェア構築と動物実験に関わる消耗品費、次年度までの成果公表を積極的に実施するための旅費とそれに関連する費用としてあわせて計上し、更なる研究推進を図る。
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