研究課題/領域番号 |
24390309
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北山 丈二 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (20251308)
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研究分担者 |
須並 英二 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70345205)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | abscopal / 放射線 / 直腸癌 / 肺転移 |
研究概要 |
Balb/cマウスに皮下腫瘍を作成、2週後に尾静脈注入による肺転移を作成し、その翌日から皮下腫瘍部分に限局した放射線照射(2Gy x5日連続)を1,3週目に施行し、免疫増強剤としてレンチナン0.1mg/body x4回/週で投与、肺転移作成後4週目で皮下腫瘍、肺転移の成長を検討した。皮下腫瘍は放射線治療群(RT)で約50%程度の成長抑制が認められ、皮下腫瘍抑制率は放射線+レンチナンの投与群(RT+LN)でやや増強したが、有意差は認めなかった。一方、肺転移を肺重量で評価すると、肺転移RT群で15%低下したが、レンチナン付加による影響は認めなかった。脾臓細胞の解析では、CD45(+)白血球中でCD3(+)CD4(+)T 細胞の比率がRT群、RT+LN群で有意に低下、逆にCD19(+)B細胞の比率は増加していたが、RT群とRT+LN群との間に有意差は認めなかった。また、CD11b(+)Gr-1(+)MDSCはRT+LN群で低下傾向を認めたが有意差には至らなかった。全体のマウスでの比較検討してみると、脾臓細胞中のCD3(+)およびCD4(+)細胞の比率は肺転移と逆相関する結果が得られた。以上の結果から、放射線照射は生体内で腫瘍抗原に対する免疫応答を惹起することにより、CD3(+)CD4(+)T細胞数を増加させ全身の抗腫瘍効果に寄与していることが確認された。免疫賦活剤レンチナンは、この投与法ではAbscopal effectを増強させる効果は認めなかったが、CD11b(+)Gr-1(+)MDSCを抑制する効果を有する可能性があり、投与法を工夫することによって臨床応用できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫賦活剤としてのレンチナンのin vivoにおける免疫誘導効果について確認することができた。ただ、放射線の遠達効果を惹起する能力は低く、臨床応用には適さないため、別な薬剤ないしはアプローチが必要であると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
近年、生理活性脂質Lysophospatidic serin (LPS)が強い免疫抑制作用を有し、腫瘍における免疫逃避機構にも深く関与している可能性が示唆されている。そこで、その主要産生酵素であるPhosphatidyl Serin-phospholipase 1(PSPLA-1)の抑制が放射線の遠達効果に関連する可能性を考慮し、癌細胞におけるこの酵素の発現を制御することによって、遠達効果の発現の変化を検討することを計画する。 1.大腸癌細胞colon26、およびその亜株LuM1におけるPSPLA-1の発現を測定する。 2.PSPLA-1遺伝子を導入、ないし、SiRNAにてknock downした細胞株を作成する。 3.Balb/cマウスを用いた局所放射線照射実験のシステムで肺転移への影響を検討する。
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