研究概要 |
1.ヒト胃がん細胞MKN45をヌードマウスに移植し薬剤を腹腔内投与し、播種を定量する実験系で薬剤の効果を判定した。ナノミセル化パクリタキセル(NK105)はパクリタキセルよりも強い抗腫瘍効果を発揮した。また、投与後のALT/AST、Creatininの値はパクリタキセルと同程度であった。また、シスプラチンは腹腔内投与で有意な抗腫瘍効果を示さなかったが、脂溶性製剤ミリプラチンは明らかに播種の発生を抑制した。 2.胃癌患者の腹水、腹腔洗浄液を回収し、細胞を白血球マーカーCD45,癌細胞に特異的なマーカーCD326に対するモノクローナル抗体で染色し、FACSを用いて、その個数を算定し、腹腔内遊離癌細胞の相対的頻度をCD326(+)細胞/CD45(+)細胞の比率(tumor cell/leukocyte ratio : TLR)にてとして測定した。手術時の検体では、腹膜播種を有する38症例のTLRは腹膜播種のない場合(28例)と比べて有意に高値であった。(中央値=4.85(0-751.37) vs 0(0-2.14),p<0.001)。また、腹腔内化学療法を施行した患者においては、TLRは化学療法後で全例低下し、その変化は洗浄細胞診の結果よりも明らかの鋭敏であった。 3.胃癌患者の腹水、腹腔洗浄液中の細胞中のCD14(+)細胞は、末梢血中のCD14(+)monocyteと比べ明らかに大型で、Arginase, CD206, CD163などのM2 macrophageの抗原に加えて、collagen1を強く発現していた1~2週間の培養で繊維芽細胞状に形態変化し、vimentin, alpha-SMAなどの間葉系マーカーを発現するようになった。
|