研究課題/領域番号 |
24390312
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
今野 弘之 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00138033)
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研究分担者 |
神谷 欣志 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (20324361)
太田 学 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (40397394)
菊池 寛利 浜松医科大学, 医学部, 助教 (70397389)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 癌微小環境 / 抗血管新生治療 / 癌幹細胞 / 低酸素 / 分子標的治療 |
研究概要 |
近年、大腸癌に対する治療において抗血管内皮増殖因子(VEGF)抗体bevacizumabが用いられているが、同治療に対する耐性を生じ得ることが次第に明らかとなってきている。さらに、不完全な血管新生阻害により癌微小環境の変化を生じ、癌の悪性化が惹起される可能性も指摘されている。本研究は、bevacizumab治療中における癌微小環境変化の、大腸癌進展への影響を解析することを目的とする。 ヒト大腸癌固形腫瘍TK4のヌードマウス同所(盲腸)移植モデルへ抗VEGF中和抗体を投与したところ、腫瘍が縮小し腫瘍血管密度が低下した。一方、抗VEGF治療群で一時は減少した核分裂像は、長期治療で回復し、治療によって一時誘導されたアポトーシスは長期治療で減少した。同腫瘍のマイクロアレイ解析では、低酸素で誘導される遺伝子群が抗VEGF治療群で有意に発現上昇しており、HIF-1の標的遺伝子であるSTC2の上昇が最大であった。大腸癌細胞株を用いた実験では、低酸素培養によりSTC2発現が上昇し、siRNAを用いたSTC2-knockdownにより、低酸素下での細胞増殖および遊走が抑制された。大腸癌臨床検体の解析では、bevacizumab治療群でSTC2が高発現であった。TK4をマウスの皮下に移植し、bevacizumab治療群、対照群に分け、治療開始後28,56,81日目に腫瘍を採取し同大にカットし、異なるヌードマウスの盲腸壁に累代移植した。56日後に盲腸移植腫瘍の重量を評価したところ、bevacizumab治療後の累代移植マウス盲腸移植腫瘍は、対象群に比べ有意に腫瘍が増大していた。 以上の結果から、大腸癌に対する長期の抗VEGF抗体治療によって腫瘍内低酸素が引き起こされ、癌細胞の増殖や遊走に関与するSTC2発現の上昇を介して、腫瘍の更なる悪性化が惹起される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究計画を全て行い、良好な結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト大腸癌固形腫瘍TK4のヌードマウス同所(盲腸)移植モデルを用いた抗VEGF中和抗体投与実験における、腫瘍間質の遺伝子発現解析等を行う予定である。
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