研究課題
血管新生促進因子VEGF に対する中和抗体bevacizumab (Avastin)が大腸癌に使用されているが、耐性機構や同治療中における癌の悪性形質獲得が示唆されている。本研究では、抗VEGF抗体治療中における癌微小環境の変化が大腸癌の進展に与える影響を解析した。ヒト大腸癌固形腫瘍TK4をヌードマウスの盲腸壁に同所移植し、抗VEGF中和抗体治療を行ったところ、腫瘍の核分裂像は治療中期(14日)に減少したが、治療後期(35日)では差を認めなかった。一方、アポトーシスは治療中期では差がなく、治療後期に減少した。治療後期に腫瘍を採取しマイクロアレイ解析したところ、低酸素で誘導される遺伝子群が有意に発現上昇しており、最も発現が上昇した遺伝子として、HIF-1の標的遺伝子であるstanniocalcin 2 (STC2) が抽出された。大腸癌細胞株の検討では、低酸素培養によってSTC2発現が上昇し、STC2-knockdownによって低酸素下における細胞増殖および遊走が抑制された。TK4をマウスの皮下に移植し、治療開始後28,56,81日目に腫瘍を採取し同大に整え、異なるマウスの盲腸壁に累代移植し、二次移植の56日後に腫瘍量を評価した。抗VEGF抗体治療を受けた皮下腫瘍は、累代移植後のマウス盲腸壁における発育が有意に亢進していた。肝切除術前に化学療法が施行された、大腸癌肝転移14例(ベバシズマブ投与:4、非投与:10)におけるSTC2発現を評価したところ、ベバシズマブ投与群で有意にnecrotic areaが大きく、同周囲でSTC2発現が亢進していた。以上より、長期の抗VEGF抗体治療によって腫瘍内低酸素が惹起され、STC2の発現が上昇し、癌細胞の増殖能や遊走能が亢進することが、大腸癌の悪性化や治療抵抗性、治療中断後における腫瘍の急速増大などの一因である可能性が示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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