研究課題/領域番号 |
24390317
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
岡 正朗 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70144946)
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研究分担者 |
浜本 義彦 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90198820)
吉村 清 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (30346564)
恒富 亮一 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10420514)
藏滿 保宏 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50281811)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 癌免疫療法 / 癌幹細胞 |
研究概要 |
癌幹細胞は転移や治療抵抗性を示すことに大きく関与しているため近年注目されている。これまで癌治療のターゲットは文字通り癌であったため、その後の再発、転移が防げなかった可能性が有り、この癌幹細胞に対する治療法の確立は急務である。ところが、現在行われている癌の治療は、癌幹細胞の特性から転用しがたいことから、癌幹細胞を直接ターゲットとした免疫療法の開発を行うこととした。癌幹細胞の研究の困難な点は、癌組織中の癌幹細胞の割合が少ないため、多くの癌幹細胞を研究することが難しいことにある。我々は組織や癌細胞株からの癌幹細胞の誘導や長期培養が可能な独自のテクニックを開発(特許申請中)しており、この分野での研究に対して大きなアドバンテージを有している。本研究の目的は、これまで培ってきた新規タンパクの同定(プロテオミクス解析)やcDNAマイクロアレイによる遺伝子検索の豊富な経験を生かし、難治性の膵癌治療成績向上を目的に、膵癌幹細胞に対する免疫療法のターゲットを見出し、次世代型免疫療法を開発することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌幹細胞の誘導及び培養法を確立できたため、この技術を基に、膵癌幹細胞特異的新規遺伝子、蛋白的検索を行い、免疫学的主要癌抗原(immunodominant antigen)の検索を行う。われわれが得意としてきたマイクロアレイ(Cancer Res, 2002年: Oncogene, 2003年: LANCET, 2003年: LANCET, 2004年:LANCET, 2005年)と新規蛋白同定(Proteomics. 2005: Proteomics. 2006)の技術と蓄積した知識を駆使することで、癌幹細胞特異的抗原の同定を行っている。現在膵癌幹細胞とその親株の膵癌細胞株それぞれ2種類ずつ計4検体よりmRNAを抽出しマイクロアレイ解析を行っている。プロテオミクス解析に関してもそれぞれ同じ細胞の蛋白に対し二次元電気泳動を行い、ゲル間のディファレンシャル解析(スポットの定量解析)をGE社のImageMasterを使用して行った。ここで癌細胞と癌幹細胞で差が出たもの12スポットに関して、現在MALDI tof/tof型の質量分析計で分析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
このマイクロアレイの結果の癌幹細胞で特異的に発現が高いものとプロテオミクス解析で強く差が出たものの中から文献的に正常組織で発現している可能性が高いものを除外する。こうして得た候補の分子の抗体を用いて、Flowcytometryあるいはウェスタンブロッティング法による解析により、癌幹細胞に特異的かを細胞レベルで確認する。選ばれた候補の分子が癌や正常組織で発現している割合をこの分子特異的な抗体を用いて免疫組織学的染色で確認する。 まずは日本人がメインの対象患者としてHLA A02 及びA24患者を対象として、Class I及びClass IIペプチドの検索を行う。ただし、すべてを同時並行で行うことは困難なため、マウスモデルで実績のあるHLA A02のClass I, HLA A24 Class I, その後Class IIについて行う。ここで得た候補ペプチドについて、T細胞受容体へのBinding affinityの上位約20個を用いる。 ここでHLA Matchedの健常人より採取した末梢血単核球(PBMC)からCD8+Tリンパ球をソートし残りをGM-CSFとIL-4を用いて樹状細胞に誘導し、これを候補のペプチドで週1回3回共培養で刺激を繰り返し最終的にELISPOT assayでInterferon(IFN)-γの活性を検索する。これをさらに同条件でHLA Matchedな腫瘍を用いてCr release assayを行い細胞障害活性を検索する。 オプションとしてHLA A2を発現しているキメラマウスA2/Kb Transgenic mouseを用いて化学合成した候補ペプチドを100ug/1回をDay0,11にincomplete Freund’s adjuvant(IFA)と一緒に投与する。Day21に脾摘し、これを後のresponder細胞として用いる。さらにHLA A02発現細胞株T2をペプチドと共培養しこれをStimulatorとしてこれらをELISPOT assayに用いることでまず活性の高いペプチドをスクリーニングする。 こうして免疫原性の高い膵癌・肝細胞癌を標的とした新規癌幹細胞抗原エピトープ・ペプチドの同定が完了する。
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