研究課題/領域番号 |
24390319
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
水元 一博 九州大学, 大学病院, 准教授 (90253418)
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研究分担者 |
大塚 隆生 九州大学, 大学病院, 助教 (20372766)
江上 拓哉 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (40507787)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / perivascular cell / 癌間質相互作用 |
研究概要 |
膵癌におけるdesmoplasia 形成の責任細胞を同定する目的として、まず、我々が膵癌組織から癌関連線維芽細胞としてすでに樹立していた初代培養細胞を使用して、各細胞集団における特定の遺伝子・タンパク発現の有無を検討した。具体的には、間葉系幹細胞を起源とする可能性が示唆されているperivascular cellの表面マーカーとして使用されているNG2とPDGFRβのmRNAおよびタンパクの発現をリアルタイムqRT-PCRおよびフローサイトメトリーにより解析した。その結果、癌関連線維芽細胞の集団の中には一定の割合でNG2および/またはPDGFRβを発現するものが含まれていることが判明した。また、膵癌切除組織における免疫組織化学染色では、主に膵癌周囲の間質にNG2、PDGFRβが発現する傾向を認めた。これらの結果は、膵癌のdesmoplasia形成の責任細胞として、NG2/PDGFRβ陽性細胞がその1つである可能性を示唆し、それらの細胞群には血管周囲に存在するとされる間葉系幹細胞が含まれる可能性がある。 さらに我々は、癌関連線維芽細胞を磁気ビーズ標識による手法を用いてNG2陽性・陰性群、また、PDGFRβ陽性・陰性群に分離し、それらの細胞群を膵癌細胞株であるSUIT2細胞と共培養を行うことによるSUIT2細胞の遊走能・浸潤能に与える影響を検討した。その結果、NG2、PDGFRβともに陽性群との共培養によりSUIT2細胞の遊走能および浸潤能は増強した。このことは、NG2/PDGRFβ陽性細胞と膵癌細胞とにおける癌間質相互作用を示唆し、今後はその詳細な分子生物学的メカニズムの解明を目指す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに膵癌desmoplasia形成の責任細胞同定の候補である間葉系幹細胞について、RNAレベルおよびタンパクレベルでその存在を証明し、さらにdesmoplasia形成に関係しうる癌間質相互作用についてもその一旦を解明することができた。この間葉系幹細胞は癌間質における血管周囲の存在し、この細胞を起源としてマトリクス産生細胞へと分化、増殖していき癌間質に広く分布することでdesmoplasia形成に至ったものと考えられる。その形成途中において癌細胞と間葉系幹細胞あるいはそれから分化した細胞との様々な相互作用が働いている。これらのことがこれまでの我々の研究から判明したことであり、研究目的に対する達成度としてはおおむね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
間葉系幹細胞の起源解明のため、GFP導入骨髄細胞移植マウスモデルを作成し、骨髄由来間葉系幹細胞の膵癌組織への誘導状態を評価する予定としている。具体的には、移植マウスモデルにおいて形成された膵癌組織中のα-SMA陽性細胞におけるGFP陽性細胞を評価することで、骨髄由来間葉系幹細胞の膵癌組織への誘導の割合や分布などを検討する。 また、間葉系幹細胞とその分化細胞が癌間質の増生へと至るメカニズム解明のため、癌間質相互作用に関わる様々な増殖因子やその阻害薬を使用したin vitroおよびin vivoでの実験などを計画している。癌細胞株と間葉系幹細胞/間葉系幹細胞由来細胞との共培養実験やヌードマウスへの共移植を行って、癌間質相互作用に関わる因子の発現の変化や間質増生に与える影響などをsiRNA,shRNA導入あるいは阻害薬投与などにより検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究は計画通りに進行しており、効率的に資金を使用できたため。 qRT-PCR試薬、ソート用モノクローナル抗体、Nucleofector用導入試薬、siRNA×4名;計、shRNA/レトロウイルス作成キット等の消耗品、マウス作成費等を経費として予定している。
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