研究課題/領域番号 |
24390321
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
掛地 吉弘 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80284488)
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研究分担者 |
北尾 洋之 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30368617)
飯森 真人 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20546460)
安藤 幸滋 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20608864)
佐伯 浩司 九州大学, 大学病院, 助教 (80325448)
徳永 えり子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50325453)
沖 英次 九州大学, 大学病院, 講師 (70380392)
前原 喜彦 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80165662)
森田 勝 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30294937)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 胃十二指腸外科学 / 5-FU感受性 / DNA修復系関連遺伝子 |
研究概要 |
1. 5-FU 感受性を規定するDNA 修復系関連遺伝子の同定 5-FU に対する新規感受性規定因子を同定するため、ニワトリB 細胞株DT40 遺伝子破壊株を用いた網羅的な感受性試験を行い、DNA複製時における異常を検知するATR-Chk1シグナル経路とその異常の回復に重要な役割を果たす相同組換え修復経路の欠損が5-FU感受性を著しく亢進させることを見出した(Fujinaka et al, DNA Repair 2012)。また、重症貧血や悪性腫瘍を多発してゲノム不安定性症候群に分類される小児遺伝性疾患のファンコニ貧血の原因遺伝子群の中で、ファンコニ貧血経路活性化の指標であるFancD2 が5-FU処理によりモノユビキチン化、核内フォーカス形成誘導を受けることから、5-FU によるDNA 損傷に対する修復にファンコニ貧血経路が深く関与することが示唆された。 2. CPT によるG2/M arrest の破壊を標的とする因子の探索 転写に依存したDNA 損傷応答で、Ataxia-telangiectasia mutated (ATM)を機能不全させることで、転写による損傷が、DNA複製を介した致死的なDNA 鎖切断に変換され、細胞死が増加することを見いだしてきた。CPT によるTopI-ccを介したDNA 損傷の代謝経路は複数存在するが、転写の経路からDNA 複製の経路への変換は、最近注目されている合成致死モデルの1つと考えられる。CPT投与により、DNA複製を介したDNA鎖切断に応答して起こるCtIPおよびATR依存的なFancJリン酸化が見いだされた(Sakasai et al, Genes Cells 2012)。 3. CPT とproteasome 阻害剤/血管新生阻害剤の併用効果の検証 胃癌細胞株MKN28, MKN45, MKN74, SNU1, Kato3 を低酸素(1% O2)下で培養することでDNA 修復遺伝子のmRNA量が減少し、線維芽細胞株MRC5 では低酸素条件下でDNA修復遺伝子のmRNA量が増加した(データ未発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、消化器癌、特に胃・大腸癌において標準治療で用いられる5-fluorouracil(5-FU), Irinotecan(CPT), Platinum(CDDP, L-OHP), Taxanes(Docetaxel, Paclitaxel)の各々の薬剤について作用点を探索して感受性を規定している分子を同定し、治療効果のpredictive marker の確立と感受性規定因子を標的とした治療法の開発を目指すことである。現在までに、1. 5-FU 感受性を規定するDNA 修復系関連遺伝子としてファンコニ貧血経路活性化の指標であるFancD2を見出した。現在、この分子に注目し、機能解析を行っている。2. CPT によるG2/M arrest の破壊を標的とする因子を探索した結果、CPT投与により、DNA複製を介したDNA鎖切断に応答して起こるCtIPおよびATR依存的なFancJリン酸化を発見した。3. CPT とproteasome 阻害剤/血管新生阻害剤の併用効果の検証については、胃癌細胞株を低酸素(1% O2)下で培養することでDNA 修復遺伝子のmRNA量が減少し、線維芽細胞株MRC5 では低酸素条件下でDNA修復遺伝子のmRNA量が増加することがわかってきた。同様の検討を大腸癌細胞株でも検討し、胃癌および大腸癌の低酸素感受性、抵抗性の株を選択し、まずCPT と血管新生阻害剤との併用で治療を行い、無治療群と比較検討を行う準備をしている。
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今後の研究の推進方策 |
1. 5-FU 感受性を規定するDNA 修復系関連遺伝子の同定:(1) 細胞株を用いたin vitro での解析;1) DNA ミスマッチ修復などのDNA 修復に関与する因子について現在進行中の解析を進めて網羅的に遺伝子破壊DT40 株を用いたcolony survival assay にて5-FUの細胞毒性の遺伝的要求性を解析する。2) 1)の結果をもとに大腸癌細胞株を5-FU で刺激し、特定の遺伝子蛋白についてリン酸化やモノユビキチン化をWestern blotting で検証する。さらにプラスミドやウイルスを用いた過剰発現系やsiRNA 法により同定された遺伝子発現を変化させ、5-FU 感受性に与える影響を細胞増殖能などで検証し、5-FU 感受性を亢進する方法を探索する。(2) 臨床切除標本を用いたin vivo での検討:大腸癌の手術症例を用いて、細胞株で高度な耐性あるいは感受性を示した遺伝子蛋白の発現を抗体による免疫組織化学染色で評価し、抗がん剤感受性やマイクロサテライト不安定性などとの相関を調べる。 2. CPT によるG2/M arrest の破壊を標的とする因子の探索:(2) CPT によるG2/M arrest の破壊を標的とした因子の探索CPT によるTopI-cc の代謝経路に注目し、合成致死を引き起こしうる標的分子を探索する。 3. CPT とproteasome 阻害剤/血管新生阻害剤の併用効果の検証:胃癌および大腸癌の低酸素感受性、抵抗性の株を選択し、まずCPT と血管新生阻害剤との併用で治療を行い、無治療群と以下の比較検討を行う。(1) CPT と血管新生抑制剤bevacizumab 併用による抗腫瘍効果の解明と(2) 大腸癌切除標本を用いたbevacizumab 併用による抗腫瘍効果の解明:いずれも低酸素と血管新生をHIF-1, pimonidazole, CD31 に対する免疫組織化学染色でHIF-1 蛋白発現、壊死部分面積、血管数、血管床面積で評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究活動を進行させる上で、平成26年度に多額に使用予定のため。 平成26年度と合算して使用する。
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