研究概要 |
胆道癌は胆道の慢性炎症を背景に発生してくることより,従来の腫瘍マーカーは炎症病態の影響によりその診断学的有用性は乏しい.糖鎖は「細胞の顔」であり,細胞表面の粘液糖蛋白の糖鎖構造は癌化により変化する.胆道癌の臨床標本を対象に,高感度糖鎖プロファイラーのレクチンマイクロアレイを用いて癌特異的なプローブレクチンを探索し,さらに,プロテオーム解析にて糖鎖分子のキャリアー蛋白を同定する.これら胆道癌特異的な糖鎖関連分子マーカーを標的とする新しい高感度なレクチン・抗体サンドイッチELISAによる測定系を構築することを目的とした. 組織標本の癌および非癌部領域の双方についてレクチンアレイによる比較糖鎖プロファイリングを行った.その結果,癌部で有意にシグナルが上昇するレクチン種(WFA)が見出された.本レクチン種の陽性率はIHCC88%,混合型肝癌CC部分80%/HCC部分0%,HCC0%,正常肝内胆管32%であった.WFAは組織染色において,IHCC癌部に特異的な染色様式(apical-,cytoplasmic-,diffUse-type)を示した.また,蛍光免疫染色にて,WFAはMY.1E12抗体で認識されるmucin core polypeptide1(MUC1)と一部mergeしていた.WFA-MY.1E12の胆管癌の検出に向けた有用性の検証のために,WFA-MY.IE12(レクチン-抗体)による簡易サンドイッチアッセイ系の構築した.本アッセイ系を用いて,肝内胆管癌,肝外胆管癌と胆道系良性疾患より得られた胆管胆汁におけるWFA-MY.1E12を測定し数値解析したところ,胆汁中CA19-9と比較して感度の面で良好なスコアが示された. さらに,本サンドイッチアッセイ系は,胆汁に加えて,血清においてもWFA-MY.1E12の測定可能であることが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胆管癌の病理組織標本から探索したバイオマーカーであるWEA-MUC1が胆汁における胆管癌マーカーとして有用であり,従来のマーカーであるCA19-9に比して圧倒的な優位性を示した.さらに,胆汁に加えて,血清においても測定可能であることが判明した.今後の胆管癌マーカーに関する臨床試験に弾みがついている.
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