研究課題/領域番号 |
24390326
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 淳 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (90188954)
|
研究分担者 |
垣見 和宏 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (80273358)
村川 知弘 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50359626)
松下 博和 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (80597782)
佐野 厚 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究医 (20569834)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 免疫細胞治療 / γδT細胞 / メソテリン / Chimeric Antigen Receptor(CAR) / メッセンジャーRNA(mRNA) / エレクトロポレーション(EP)法 |
研究概要 |
本研究の目的は、難治性の疾患である胸膜中皮腫に対する抗原特異的免疫細胞治療を開発することである。末梢血から採取した患者の自己γδ T細胞にメソテリン特異的受容体遺伝子(MesoCAR)を導入して悪性中皮腫細胞特異的なキラーT細胞へと改変し、再び患者に投与する。まず受容体の一過性発現が得られるメッセンジャーRNA(mRNA)を導入し臨床試験を実施し、安全性を確認した後レンチウイルスを用いた遺伝子導入を行う。 平成24年度においては、治療に用いるMesoCAR^+γδ T細胞の投与細胞数、投与間隔、投与回数などを設定するための基礎的なデータを集積するため、結腸・直腸癌肺転移切除後の再発予防(UMIN000000854)に対する自己γδT細胞治療の臨床試験においてγδ T細胞の投与を受けた患者から得られた検体を用いて、フローサイトメーターによる末梢血中のγδ T細胞の動態の解析とサイトカインの産生を検討した。1-2週間ごとに計8回投与されたγδ T細胞は、IL-2の併用投与や内因性リンパ球の除去等の処置を必要とせず、生体内で安定して蓄積されていくことがわかった。蓄積されたリンパ球は、PMA/ionomycinやイソペンテニルニリン酸陽性腫瘍細胞に反応してIFN-γを産生し、かつ細胞傷害性穎粒を分泌するエフェクター機能を維持していた。また、投与γδT細胞のレセプター発現を検討したところIL-2Rα^-IL-7Rα^-IL-15Rα^-IL_2Rβ^+γ^+であったため、IL-15のトランスプレゼンテーションがこれらの細胞の生体内での維持に十分であることが考えられ、IL-2の併用投与は必要でないことが示された。 このような自己γδT細胞にメソテリン特異的受容体遺伝子(MesoCAR)のメッセンジャーRNA(mRNA)を導入するため、Carl June博士から提供されたMesoCARのcDNAに3'UTRとポリAを付加して、より安定的な受容体発現を可能にするmRNA合成用のコンストラクトを作成した。エレクトロポレーション(EP)法で導入したCARの導入効率・発現率をフローサイトメーターで解析し最適化を行った。MesoCAR^+γδ T細胞がメソテリン陽性がん細胞に対して強いIFN-γの産生と細胞傷害活性を示すことを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
治療に用いるMesoCAR^+γ_δT細胞の投与細胞数、投与間隔、投与回数などを設定するための基礎的なデータを集積することができた。また、自己γ_δT細胞ヘメソテリン特異的受容体(MesoCAR)mRNAをエレクトロポレーション(EP)法で導入し、MesoCARの導入効率・発現率とMesoCAR^+γ_δT細胞のin vitroでのエフェクター機能を解析して、治療用細胞調整のための最適化を行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
MesoCAR^+γ_δT細胞のin vivoでの抗腫瘍作用の検討を行い、得られた情報からMesoCAR^+γ_δT細胞を用いた胸膜中皮腫に対する臨床研究のデザインを始める。またγ_δT細胞にレンチウイルスベクターを用いてCAR遺伝子導入を行い、mRNA法と比較検討する。レンチウイルスを用いた遺伝子治療の準備もすすめていく。
|