研究課題/領域番号 |
24390330
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
美甘 章仁 山口大学, 医学系研究科, 准教授 (30372709)
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研究分担者 |
濱野 公一 山口大学, 医学系研究科, 教授 (60263787)
李 桃生 長崎大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (50379997)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 虚血プレコンディショニング / 脊髄傷害 |
研究概要 |
脊髄傷害(対麻痺)は胸腹部大動脈瘤手術治療の重篤な合併症として、未だに血管外科領域の大きな課題の一つである。我々の最新研究で、下肢での虚血プレコンディショニング(IPC)のLate Phase(24時間後)に心筋の虚血再灌流傷害に対する明らかな保護効果を認め、その保護作用は骨髄由来幹細胞の動員と集積が関与していることを証明した(J Am Coll Cardio1. 2009;53:1814-22)。一方、IPCによる臓器保護効果は心臓に限らず、脊髄、肝臓、腎臓などの他臓器においても報告されている。本研究では、下肢でのIPCによる脊髄の虚血再灌流傷害に対する保護効果の有無およびその機序、特にLate Phaseにおける骨髄由来幹細胞の関与について調べ、基礎研究においてIPCによる脊髄保護効果が確認された後には、胸部下行大動脈瘤および胸腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術、人工血管置換術の患者を対象とした臨床試験を行う予定である。平成24年度は、下肢IPCモデルの作製および脊髄虚血再灌流傷害モデルの作製を以下の通り行った。 1.下肢IPCモデルの作製:C57BL/6マウスのiliacartery分岐部直上の腹部大動脈をtapingする。下肢IPCは腹部大動脈遮断による5分間虚血と5分間灌流を3サイクル行う。Sham開腹したマウスを対照群とする。 2.脊髄虚血再灌流傷害モデルの作製:下肢IPCによる脊髄傷害の保護作用を評価するために、IPC刺激後の2時間(Early Phase)と24時間(Late Phase)後に、脊髄虚血再灌流傷害モデル作製する。脊髄虚血再灌流傷害の作製はマウスを気管内挿管下に人工呼吸管理し、左開胸を行う。下行大動脈を結紮して10分後に再灌流させ、脊髄虚血再灌流傷害モデルを作製する(詳しい方法はAnesthesiology. 2010;1134:880-91に参照)。また、Sham開腹後に脊髄虚血再灌流傷害モデル作製したマウスを対照群とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
下肢IPCモデルの作製および脊髄虚血再灌流傷害モデルの作製は行うことができたが、下肢IPCによる脊髄傷害の保護作用の機能的・組織学的評価は行えなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
下肢IPCによる脊髄傷害の保護作用を機能的・組織学的に評価する。機能的評価は、脊髄虚血再灌流傷害モデル作製後1,3,7,14日目にTarlov Scoreにより脊髄傷害の程度を定量評価することで行う。組織学的評価は、脊髄虚血再灌流傷害モデル作製後14日目にマウスを犠牲死させ、脊髄組織を摘出し、残存ニューロンの数(HE染色)、細胞アポトーシス(TUNEL染色、Caspase-3免疫染色)について組織学的評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
下肢IPCモデルの作製および脊髄虚血再灌流傷害モデルの作製に時間と労力を費やし、下肢IPCによる脊髄傷害の保護作用の機能的・組織学的評価が行えなかったことに伴い、それらの評価に必要な関連試薬、および消耗品の購入費用について未使用額が生じた。次年度は、下肢IPCによる脊髄傷害の保護作用の機能的・組織学的評価を精力的に行う予定であり、H24年度の未使用額も合わせて使用する予定である。
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