研究課題
これまでの研究から、大動脈解離においてマクロファージと血管平滑筋細胞の相互作用が病態形成に重要な役割を果たすことが示唆された。ヒト解離病態およびマウス解離モデルの双方でIL-6発現亢進およびIL-6下流分子であるSTAT3の活性化を認めたことから、マクロファージおよび血管平滑筋細胞におけるSTAT3シグナルの役割を検討した。マクロファージ特異的にSTAT3シグナルを亢進させたマウス(マクロファージ特異的SOCS3ノックアウト:mSOCS3-KO)では、炎症性フェノタイプであるM1マクロファージの比率が増加していた。腹部大動脈を塩化カルシウムで処置することにより大動脈硬化を引き起こし、アンジオテンシンII投与により大動脈壁への負荷を亢進させる大動脈ストレスモデルを作成した。負荷後1週間で、野生型、mSOCS3-KOともに微小な大動脈壁傷害が観察された。負荷後6週間の時点で、野生型では大動脈壁傷害は線維性に治癒していたが、mSOCS3-KOでは半数が大動脈解離を発症した。遺伝子改変によらない大動脈解離モデルとして、コラーゲン・エラスチン架橋阻害薬であるベータアミノプロピオニトリル(BAPN)とアンジオテンシンIIを同時に持続投与し、2週間の経過で発症する解離モデルを開発した(BAPN+AngIIモデル)。さらに、病変長による解離の重症度の評価法を確立した。平滑筋細胞特異的にSTAT3シグナルを亢進させたマウス(平滑筋細胞特異的SOCS3ノックアウト:smSOCS3-KO)でBAPN+AngIIモデルを作成したところ、野生型と比較してsmSOCS3-KOマウスでは解離の重症度が抑制された。病理組織学的にはsmSOCS3-KOでは外膜コラーゲンが増加していたことから、平滑筋細胞STAT3シグナル亢進が細胞外マトリックス代謝を介して組織強度を向上させていることが示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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