研究課題/領域番号 |
24390335
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
田中 文啓 産業医科大学, 医学部, 教授 (10283673)
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研究分担者 |
浦本 秀隆 産業医科大学, 医学部, 准教授 (90389445)
宗 知子 産業医科大学, 医学部, 助教 (00341529)
長谷川 誠紀 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10252438)
大永 崇 富山県工業技術センター, その他部局等, 研究員 (10416133)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 胸膜中皮腫 / 血液 / バイオマーカー / 診断 / 予後 |
研究概要 |
・悪性胸膜中皮腫の治療成績向上のために診断・治療に有用なバイオマーカーの開発が求められている。我々はこれまでの研究で、既存のCellSearchシステムにより検出された末梢血液中循環腫瘍細胞(CTC)が中皮腫のバイオマーカーとして有用である可能性を示した。しかしながらCellSearchは、1)EpCAMを強く発現する肺癌でもCTC検出感度は不十分、2)中皮腫ではEpCAMを発現する上皮型の一部の腫瘍細胞のみしか補足できない、ことから、中皮腫ではより高感度でEpCAMに依存しないCTC検出システムの必要性が示唆された。そこで本研究では新規CTC検出系をはじめとするバイオマーカーの研究開発を計画し本年度は以下の研究成果を得た。 ・国産の高感度“シャトル(汎用)”チップに抗EpCAM抗体を結合させEpCAM発現陽性細胞株の高感度補足が可能なことを確認し、この結果に基づいて中皮腫での高感度CTC検出に取り組んだ。その結果、チップに中皮腫細胞表面に高発現しているMesothelinやD2-40に対する抗体を結合させて複数の中皮腫細胞株を用いてのCTCの捕捉が可能であること示し、同時に一部の中皮腫患者の血液から高い効率(末梢血液8mL中のCTC数400個以上;CellSearchなら最大10個程度)でCTCを分離することに成功した(2013年米国癌学会発表)。 ・更に新開発のCTC-chipは中皮腫細胞株をPBSに浮遊させた定量実験で90-95%以上の高い細胞捕捉率を示し、CellSearchとの比較実験において有意に高い細胞捕捉率(10%程度)と比較して、極めて良好な成績であった。一方で、全血に細胞株を浮遊させた場合の細胞捕捉率はCellSearchの5-10倍以上と有意に高かったものの、捕捉率自体は15%程度にとどまった (2014年米国癌学会発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに、1) 新開発のチップでの循環腫瘍細胞(CTC)の高感度補足が可能であること、2) 新開発のチップに任意の抗体を結合しEpCAMに依存しないCTC捕捉が可能であること、を示すことができた。また本システムを用いて実際に悪性胸膜中皮腫患者の末梢血液からCTCを検出することができ、その点では当初の研究計画以上に進展している。一方で、1) 新規システムを用いても血液からの腫瘍細胞検出効率はいまだ不十分でありより改良の余地があること、2) 循環内皮細胞(CEC)の多様性の研究等の他のバイオマーカーについては大きな成果が得られておらずやや遅れている。以上より、全体として概ね順調に研究が進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従い概ね順調に研究が進展しているため大きな研究計画の変更は行わない。ただ、1) 血液からのより高効率の腫瘍細胞分離のための検体前処理等の検討を行うこと、2) 大きな成果が得られていない循環内皮細胞(CEC)についてはSMRP等の他のバイオマーカーとの組み合わせによるバイオマーカーとしての意義を検討すること、を更に本研究を推進するための今年度の対策として実施する。
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