研究実績の概要 |
1) もやもや病患者・末梢血における血管内皮前駆細胞(EPC)のFACS解析 新規に発生したもやもや病患者から末梢血中の単核球分画を分離した。CD34, CD133, VEGFR2などEPCの表面抗原に対してフローサイトメトリー(FACS)を実施し、各患者における血中EPC数を測定した。対照群との比較や、血行再建術前後での変化を検討して、もやもや病における血中EPCと病因の関係について明らかにすることを試みた。また、保存した血漿をもちいてELISAを行ない、血漿中のVEGF、SDF-1α、bFGF、HGF濃度を測定した。術前採血では小児患者、成人患者ともにEPCの有意な低下が示された。また術後採血が行われた症例では、術後に有意なCD34+/CD133+細胞の低下がみられた。またELISAでは、小児患者の術後でVEGFが増加傾向を示していた。EPCの患者群での低下所見は、病変部でのEPC消費亢進を示唆する所見と考えられた。一方、小児患者術後でのVEGF増加傾向は、間接血行再建による良好な側副血行と関連することが示唆された。本結果は国際学術誌に投稿準備中である。 2)もやもや病患者由来iPS細胞の樹立 もやもや病患者3名分と正常対照3名分の末梢血単核球に、センダイウイルスを用いて山中4因子を導入し、iPS細胞を作成した。樹立したiPS細胞を用いて、血管内皮への分化誘導を行った。培養後約2週間で免疫染色を行い、CD31, VE-cadherin の発現を確認した。得られた血管内皮を用いて、正常対照ともやもや病由来内皮細胞を比較検討したところ、もやもや病では管腔形成能の低下が見られた。これはサイトカイン刺激によっても変化が生じなかった。また得られた内皮細胞に対してマイクロアレイ解析とプロテオミクス解析により、網羅的な探索を行った。もやもや病で発現が低下している遺伝子/タンパク質のなかに血管新生に関与するものが見出され、病因との関係が示唆された。本結果は国際学術誌に投稿準備中である。
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