研究課題/領域番号 |
24390338
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
北中 千史 山形大学, 医学部, 教授 (70260320)
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研究分担者 |
根本 建二 山形大学, 医学部, 教授 (10208291)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経膠芽腫 |
研究実績の概要 |
これまでに我々は核内転写因子FOXO3が活性化するとグリオーマ幹細胞に対して分化を誘導するとともにその腫瘍形成能を抑制することを明らかにしてきた。そこでFOXO3活性化薬を探索した結果、我々は糖尿病治療薬であるメトホルミンがグリオーマ幹細胞のFOXO3を活性化する作用があることを見出した。さらにメトホルミンを用いた一連の検討の結果からはメトホルミンがグリオーマ幹細胞治療薬として有望であることが示唆された。そこで実際の臨床応用を想定してメトホルミンとテモゾロミドの併用効果を脳腫瘍治療モデルを用いて検討したところ、それぞれの単独投与よりも併用投与で生存期間がさらに延長することが明らかになった。 一方、これまでメトホルミン以外でFOXO3活性化を介してがん幹細胞治療効果を発揮しうる薬剤の探索も並行して行っていたが、我々は今回新たにFOXO3活性化効果をもち、臨床的安全性も確認されているある種の薬剤がグリオーマ幹細胞のstemnessを抑制しうる可能性を見出した。また、メトホルミンと並ぶもう一つのグリオーマ幹細胞治療薬候補であるJNK阻害薬については、現在、これまで用いて来た臨床的安全性が不明なJNK阻害薬SP600125に代わり既に臨床的安全性が確認されているJNK阻害薬がSP600125と同様にがん幹細胞治療効果を有することを示唆する知見を得つつある。そこでこの新たなJNK阻害薬に関する基本的検討が終了次第、テモゾロミドとの相互作用についても検討を行うことを考慮している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題が目的とする臨床的妥当性のあるグリオーマ根治モデルの作成には臨床的安全性の高いGliostatsの開発が不可欠である。これまでに我々はGliostatsとしてFOXO3活性化薬としてメトホルミン、あるいはJNK阻害薬としてSP600125を見出してきたが、これらに加えて、すでに臨床で安全に使用されている薬物の中からFOXO3活性化薬、JNK阻害薬の候補を本研究課題において新たに見出すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
新たに見出されたGliostat候補薬のグリオーマ幹細胞標的治療薬としての有用性をin vitro, in vivoの各実験系においてさらに検証するとともに、これらの薬剤を用いてグリオーマ根治療法モデルの作成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はGliostat候補としてはメトホルミン、SP600125のみであったためこれらの薬剤を中心とした治療モデルの作成を計画していたが、本研究課題の研究過程において新たな、しかも臨床的安全性が十分に確認されているGliostat候補の発見に成功した。従って当初計画通りに研究を進めるよりも、次年度にかけてこれらの薬剤のcharacterizationを十分に行い、これら薬剤を含めた形でより臨床的妥当性の高いグリオーマ根治モデルの作成を試みる計画へと変更することが研究課題の主旨に鑑みて適切と判断されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
新たに見出されたGliostat候補のグリオーマ幹細胞標的治療薬としての有用性検証を行うための実験、さらにこれらの新たな候補薬を用いた治療モデルの作成に、今年度未使用分の研究費を使用する。
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