研究課題/領域番号 |
24390339
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高野 晋吾 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50292553)
|
研究分担者 |
山下 年晴 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50400677)
依馬 正次 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 教授 (60359578)
久保田 義顕 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (50348687)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 血管新生 / グリオーマ / 微小環境 / 間葉系幹細胞 / 腫瘍幹細胞 / 周皮細胞 / IDH1 / 微小血管内皮細胞 |
研究概要 |
悪性脳腫瘍の強力な血管新生因子であるVEGFの中和抗体;ベバシズマブが臨床に導入されたが、その効果には限界があり抵抗性が問題となっている(Takano S, 2012-1)。抵抗性を克服するために、血管新生に関与する脳腫瘍を構成する微小環境に注目し、構成する細胞群のクロストークを明らかにし、クロストークを抑制することにより、VEGF抑制を超える脳腫瘍に対する血管新生抑制療法の開発を目指すことを目的として研究を行った。 微小環境の中で今年度は腫瘍細胞の代謝に関してIDHの関与(Takano S, 2012-2, Kaneko M, Takano S, 2013)を明らかにした。IDH1の発現はグリオーマの各悪性グレードで予後良好因子であったが、血管新生の程度とVEGF発現は有意な予後因子ではなかった。また、腫瘍細胞と間葉系幹細胞とのクロストーク(Akimoto K, Takano S, 2012)を明らかにした。脂肪組織由来の間葉系細胞をグリオーマ細胞と共培養すると血管新生因子の高発現がみられ血管造成の盛んな腫瘍が形成された。また腫瘍幹細胞の内皮細胞へのtransdifferentiationにはSDF1/CXCR4ケモカインの関与は少ないことを明らかにした(Uemae U, Takano S, 2014)。細胞培養として、ヒトグリオーマ細胞、ヒト臍帯静脈内皮細胞、マウス人工腫瘍幹細胞に加えて、ヒト周皮細胞とヒト微小血管内皮細胞の培養を開始した。次年度はこれらのヒト細胞を用いて微小環境についてvitro共培養および脳内腫瘍モデルを行い、各細胞間のクロスト-クの標的分子を見出し、その抑制による脳腫瘍血管新生抑制実験を試みる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Vitroでの血管内皮細胞と周皮細胞、グリオーマ細胞との共培養モデルの作成が不十分であったためである。結果のでた間葉系幹細胞、人工腫瘍幹細胞を用いた実験では、腫瘍細胞とのクロストークを実現できで、その標的分子が明らかとすることができたが、HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)を用いた内皮細胞実験では腫瘍細胞とのクロストークの反応が不十分であった。そこで、途中から内皮細胞の種類を、より腫瘍の内皮細胞の性格に近いと考えられる微小血管内皮細胞に変更した。また周皮細胞の培養も初めてであり、条件設定に時間がかかっている。今年度末には2種類の細胞の培養条件設定に成功している。
|
今後の研究の推進方策 |
内皮細胞とグリオーマ細胞のクロストークが弱い理由の一つに、腫瘍の環境と違う条件があるのではないかと考えて、vitroでの実験を正常酸素状態での実験に加えて、低酸素培養器を用いて低酸素状態で行うこととする。低酸素状態ではクロストークに必要な増殖因子、ケモカインが正常酸素状態に比べて多くなり、クロストークの反応が見やすくなると考えている。さらに、vitroでクロストークに関与する標的因子を同定してからvivo実験に進む予定であったが、同定できない場合も想定して、Notch / Jagged1のシステムに標的を絞って同時にvivo実験も開始する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度はvitroでのモデル設定がうまく定まらないことおよび健康上の問題で入院加療が必要となり、学会活動、実験の遂行が十分に行えなかった。従って、学会か活動にかかる旅費としては全く使用しなかった。 次年度使用額は、新しい血管新生抑制療法として考えている、ペプチド療法のうち、VEGFとは違う増殖因子に対するペプチド合成作成の費用にあてる。次年度の研究計画に加える。
|