研究実績の概要 |
1.グリオーマ誘発性血管新生に係る因子の同定 ヒトグリオーマ細胞培養上清により誘発される血管内皮細胞の管形成能は周皮細胞との共培養で増強され、6種類のグリオーマで管腔形成能を定量評価した。腫瘍細胞の培養上澄に含まれる血管新生因子を抗体アレイで半定量した。管腔形成能の程度と、培養上清の血管新生因子の程度を比べ相関がみられる因子として、IL8, TIMP-1, RANTES, IL6、MMP1,Tie2,VEGFR2が検出された。これまで報告の少ないRANTESに焦点を標的を絞った。グリオーマでのRANTESのmRNA発現、パラフィン切片でその局在を確かめ、siRNAによるノックダウンで管腔形成能を測定した。RANTESはグリオーマ誘発血管新生にかかわるVEGF以外の重要な因子であることが明らかにされた。 2.グリオーマにおける血管密度評価の見直し 膠芽腫に対するVEGF中和抗体の大規模第III相臨床試験では、生存期間延長は見られなかった。血管新生がグリオーマ患者の生存期間に影響を及ぼしているのか自験例で検討した。142例のグリオーマ組織の切片でCD34で染色される腫瘍血管数の定量値(0.1mm2当たりの血管数:血管密度)を測定した。血管密度はグレード4 (n51), グレード3 (n53), グレード (n38)は、それぞれ47.3+29.3, 38.1;25.7, 23.0+15.3であり、グレード4はグレード2に比べて有意に、グレード3はグレード2に比べて有意に高かった。生存期間中央値は血管密度が高い群(>30, n71)では55.2か月、低い群(<30, n71)では32.0か月であり、血管密度が高い群で有意に予後が長かった。以上より、グリオーマの血管密度であらわされる血管新生能はグリオーマの種類によって異なり、重要な予後因子であることが改めて明らかにされた。
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