研究課題
基盤研究(B)
(研究の目的)本研究では高分子ナノミセルを抗癌剤のデリバリーシステムとして使用し、難治疾患である悪性脳腫瘍を対象として局所集積効果の増強と全身毒性の軽減を検証する。従来のpassive targetingに関して、粒子系の最適化や血管透過性を修飾する薬剤の併用により効果の向上を目指す。Active targetingとして近年開発されてきたリガンド搭載型ミセル、物理刺激解離型ミセル(pH、放射線、光、超音波)に関しては、血液脳関門の存在する悪性脳腫瘍における効果をin vivoモデルで検証し、得られた知見から脳腫瘍の治療により適した機能性ミセルの開発を行う。さらに、プラズミド内包ミセルによる遺伝子導入も併用し、ミセルの到達した局所の微小環境を変化させることで、より優れたミセルの集積性や抗癌活性を達成すべく、血管透過性関連遺伝子、サイトカイン遺伝子などの比較検討を行う。ウイルス療法におけるウイルスのデリバリーへの応用についても開発研究を行う。(平成24年度の実績)pHの変化に反応して解離しコアの薬剤を放出する高分子ミセルを調製する。コアの薬剤としては、化合物として安定であり、蛍光顕微鏡での検出が容易で、臨床でも広く使われているadriamycinが候補とする。また外層の高分子の構造を変更し、ミセル径を40nmに厳密に制御することで肝への非特異的取り込みが軽減することに成功した新型dachplatinミセルの調製も行う。ミセルの粒子系や薬剤含有濃度などの評価を行う。以上は、分担研究者片岡のもとで実施した。マウス脳内に移植した腫瘍内での効果を評価するため、脳腫瘍細胞株にluciferaseを発現するためレンチウイルス作製の準備として、医科学研究所遺伝子組換え生物等安全委員会に実験計画の申請を行い、承認を得た。IVIS装置による測定により脳腫瘍の大きさを経時的に評価するため、IVIS装置の設置室のP2A施設としての承認申請の手配を行い、実験室のP2A実験室としての承認と動物実験計画の承認を得た。新たな実験施設において、脳腫瘍移植モデルの再現性を確認するために、Neuro2aやU87MG脳腫瘍細胞株のマウス脳内移植実験を行った。また、分担研究者片岡のところ(本郷キャンパス)において、2~3ヶ月に1回程度の頻度で研究打ち合わせのためのミーティングを開催した。
3: やや遅れている
研究代表者は平成23年度の後半に東京大学医科学研究所に異動した。そのため、諸実験計画書の承認や部局講習の受講などの手続きが必要となり実質的な実験再開が平成24年度後半に入ってからであったため。
平成24年度の研究成果を踏まえ、次年度も引き続き研究を遂行する。
次年度も平成24年度とほぼ同等の予算規模での研究を計画する。本年度の予算に214円と小額の残額が生じたが、年度予算に繰り入れて研究を遂行する。
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Int J Cancer.
巻: 132 ページ: 485-494
10.1002/ijc.27681.
Oncogene
10.1038/one.2012.399