研究課題
脳血管疾患は厚生労働省の人口動態統計における国民年間死亡原因の第3 位を長年占めている。しかも、厚生労働省の介護給付費実態調査によると要介護の原因となった疾患の内約3 割が脳血管疾患であり、特に男性においてはその割合は4 割以上と報告されている。脳血管疾患の半分以上を占める脳梗塞の主な原因の一つにアテローム血栓性脳梗塞があり、頭蓋内血管の狭窄も重要な一因である。しかし、頸動脈疾患や冠血管の動脈硬化による狭窄と比較して、その分子メカニズムに不明な点が多い、そこで今回の研究ではターゲットを頭蓋内主幹動脈とし、狭窄のメカニズムを明らかとし、予防法を開発する。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究達成について① 先行研究により、RNF213 遺伝子に変異が認められた家系より京都大学医の倫理委員会の承認を得て繊維芽細胞を取得している。この細胞より京都大学iPS 細胞研究センターのiPS細胞を樹立した。② 樹立したiPS 細胞を用いて、内皮細胞への分化を誘導した。通常の分化した細胞を用いて、epigenetic な解析を行う。正常なヒト細胞から樹立したiPS 細胞と比較して内皮細胞、血管平滑筋細胞の分化割合、増殖能を評価した。③動脈硬化性動脈狭窄患者からの血液にRNF213 遺伝子の異常が認められるかを、SNP 解析により検討した。④もやもや病患者および動脈硬化性病変患者の中大脳動脈、髄液、硬膜などの生体試料を採取し保存した。以上のように研究は進行している。
今後の研究推進について① RNF213 タンパク欠損マウスを作成し、そのマウスにおける頭蓋内血管病変の有無と特徴を解析する。またこのマウスより得られた血管内皮細胞、血管平滑筋細胞を培養し、その特徴について解析する。② 樹立したiPS 細胞を用いてDNA methyl 化のレベルについて、Genomewide のBisulfite sequencing,Comprehensive high-throughput array-based relative methylation (CHARM)array analysis, Histone の修飾についてはChip-Sequencing, noncoding RNA については、Total RNA を用いてGenomewide の発現解析を行う。(小泉)。樹立された、iPS 細胞の中で、代表的なepigenetic 状態を表すクローンについて種々の条件下で応答の観察を行う。これらの条件については、高サイトカイン、高TGF-、Hypoxia , DNA 損傷が挙げられる(高木)。③内皮細胞あるいは平滑筋細胞の由来の細胞系列を用いて、明瞭な疾患特異的指標を探索する(小泉、高木)。臨床症例についても、手術時に得られる生体試料(もやもや病および動脈硬化性病変)についてepigenetic な状態の評価を行い、iPS 由来の細胞と比較検討する(宮本、高木)。手術時に、安全な範囲で採取できる生体試料を集める。採取した組織は、すぐに液体窒素にて冷凍し、厳重に管理されたdeep freezer にて管理を行う。これらの組織において免疫組織学的アプローチ、およびin situ hybridization とlaser capture microdissection にてDNA、タンパク解析を行う。⑤ 前年度に採取した、生体試料より、DNA array およびmicroRNA array を行い、それぞれの発現を解析する。⑥ 前実験で得られたデータを元にDNA とmicroRNA の発現をin situ hybrizization にて解析する。⑦ 以上の実験で得られた異常遺伝子、異常microRNA を、欠損させたマウスを作成し形質を検討する
研究計画の一部遅れがあり、研究費使用がずれ込んだため。生体試料(主に中大脳動脈切片)の免疫染色(抗体、試薬)に使用する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
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