研究概要 |
熊本大学生命科学研究部との共同作業により,今年度で日本人脳の完全連続標本作成がほぼ完成している。これ染色後に電子化し,Neuron再構成ソフトウェア(NeurolucidaTM)を用いて脳内微小構造のトレーシングを行い,三次元再構築により全体の形状モデルを作成しているところである。さらに海馬と基底核においては、顕微鏡連動型Neurolucida装置を用いて、高倍率での顕微鏡観察に基づく詳細な組織構築をアトラス内に書き込む作業を開始している。また基底核と海馬の亜核の正確な同定のために,保存してある隣接切片に免疫組織化学染色を行った。これと平行して、淡蒼球内節内部の未知の亜核区分とその三次元的構成を見いだすために、免疫組織化学染色の最適な条件を用いる事ができるマウスの脳での検討を行った。その結果、ヒトの淡蒼球内節に相当するマウス脚内核が、(1)尾側においてパルブアルブミン陽性ニューロンが密集するCore領域と、(2)それを取り巻きながら吻側へ大きく広がるshell領域(ソマトスタチン陽性ニューロンが主体)からなることを世界で初めて見いだし、また連続切片に基づくその三次元再構築像を提示する事に成功し、第118回日本解剖学会総会において発表した。この研究内容は、そのままヒトの淡蒼球内節亜核区分の立体的構成を知る研究に直接応用できることが期待できる。以上に加えて、2例目のヒト脳組織標本作製に着手し、順調に作業を進めている。 さらに九州大学システム情報科学院との共同作業により基底核周囲の局所2Dアトラスを個人のMRIを元にテイラーメイド変形するプログラムを作成中である。特に今年度は最小二乗法によるアトラス変形の結果を検証した。またその作業と平行して,正常人脳MRI(T1強調画像)を各年代別に収集し,脳表,脳室,線条体(尾状核・被殻)の輪郭を抽出し,随時3Dモデル化して形状データを蓄積している。
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