研究課題/領域番号 |
24390345
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮城 靖 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (10380403)
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研究分担者 |
福田 孝一 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (50253414)
諸岡 健一 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (80323806)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳神経外科学 / 中枢神経解剖学 / 機能的脳神経外科学 / 定位脳手術 / 脳図譜 |
研究概要 |
脳深部刺激療法により、機能的定位脳手術の適応は精神疾患をはじめとした様々な疾患に広がっている。しかし現在のヒト脳アトラスには様々な問題点・不正確さがあるために直接定位脳手術に応用できず、新たな手術標的の開発には大きな危険を伴う。また前後に長い欧米人脳によるアトラスしかないため、球形に近い東洋人脳によるアトラスが必要である。本研究課題では、我々が先行研究で作成した日本人脳の完全連続標本を用い、3次元的整合性と高精細組織画像を両立させ、さらに患者MRI画像をもとに最適に形状変形できる次世代型の定位脳手術用ヒト脳座標デジタルアトラスを開発する。これにより難治性神経疾患のテイラーメイド治療に対応できる日本人版の定位脳手術支援システムを構築し、安心・安全・精確な定位脳手術を実現することを第一の目的とし、これをもとに将来的な脳科学統合データベースの基盤形成を第二の目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト脳標本作製は98.8%、トレースは93%が終了した。また冠状断脳アトラスから作成した3Dモデルは軸変換処理により、水平断および矢状断へ変換してトリミングを終了した。現在さらに冠状断に戻り最終段階のトリミングを行なっている。脳アトラス変形処理プログラムは2Dで最小二乗法による変換を試み、患者脳を反映した変形を行なうためにいくつかの対応点の必要性が明らかになった。現在有限要素解析を用いた3D変形に拡充する作業に着手している。テイラーメイド型脳アトラスにおいて、臨床的に重要な淡蒼球内節の内部構造については特に詳しく記載することが求められるために、実験動物での研究も平行して進めており、既にマウスの脚内核(ヒト淡蒼球内節に相当)内部における、未知の3次元構成を明らかにした。すなわち脚内核が二重の回転楕円体構造をとっていること、そのコア部分は尾側に偏位するパルブアルブミン陽性ニューロンの集団からなり、基底核の回路で示される視床投射ニューロンに該当すること、一方でコアを取り巻きながら吻側に広がるサラウンド領域は、パルブアルブミン陰性ニューロンからなること、従来ソマトスタチン陽性ニューロンがこの部位に存在することが知られており近年注目されている外側手綱核へ投射するニューロンと考えられることなどである。これらの基礎研究をもとにヒト淡蒼球内の詳細な内部構造も平行して解析中でアトラスに反映する準備をしている。
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今後の研究の推進方策 |
冠状断より作成した形状モデルを3方向からのトリミングを終了し標準脳の3Dアトラスを完成させる。本年度は有限要素法を用いてより精度の高い変形法を確立する。実際の脳萎縮には個体差や加齢の影響が大きいため,あらゆる年齢層のMRI 画像から統計学的に脳局所毎に萎縮係数を求める。局所脳加齢萎縮係数を算出し萎縮率マップを作成するために,健常者年代別20代から70代まで,6 群の各々10 名以上の脳MRI 画像データを収集している。20歳代女性のデータなど不足しているデータを重点的に収集する。形状可変デジタル脳アトラスが完成し次第,定位脳手術に応用し精度を検証する。従来の方法(SW脳図譜上の交連間線から求める古典的座標設定法,および周辺構造との関係から求める間接的座標設定法)に対し,このデジタル脳アトラスを変形させ得られたテイラーメイド・アトラスから標的座標を直接設定する方法を比較し,得られた結果を取りまとめて成果発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
システム生命科学研究科学生の協力により画像解析処理過程が格段に進み、人件費が節約できたため。 大容量データ保存のため記憶媒体の購入に充てる。
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