軸索伸展促進因子Lotusは、哺乳類中枢神経系に存在するNogoなどの軸索伸張阻害因子の効果を阻害する(すなわち軸索を進展させる)新規物質である。本因子が、神経発生および脳梗塞後の機能回復にどの程度関与するかを検証した。 胎生期からの神経発生では、Lotus 欠損マウス 生後7日目の海馬にて、歯状回Hilusに遊走途中と考えられる神経細胞の集積があることを見いだした。これらの神経細胞は、遊走中の神経前駆細胞特異的マーカーであるNeuroD陽性細胞が有意に多く、実際に遊走が阻害されることを示した。逆に、Lotusは神経前駆細胞の遊走を促進することを示しており、神経発生に過程においても重要な役割を担っていることが判明した。 また、脳梗塞後の機能回復に関与するか否かを、過剰発現マウスにて検証した。マウスには糸あげ法による脳梗塞を作成し、脳梗塞のサイズを比較したところ過剰発現型を野生型では大きさに差は無かった。神経機能はBedersons scoreを用いて長期追跡したところ、12週以降で有意に過剰発現マウスの機能回復が優れていた。これは、Lotusが軸索再生などを通じて脳の機能再建に重要な役割を果たすことを示しており、今後の脳梗塞治療の新たな戦略になると考えられた。
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