研究実績の概要 |
これまでの研究では関節軟骨と成長板軟骨の遺伝子発現の差を基点として、関節軟骨に特異的に発現する遺伝子を同定、機能解析を行ってきた。本年度はこの研究を更に発展させ、関節軟骨内の各層毎に異なる発現をする遺伝子を同定して機能を解析する方針での研究を進めた。 関節軟骨は組織学的に数層に分かれており、特に最表層(superficial zone, SFZ)とそれより深い層では、構造・機能に大きな違いがある事が知られている。しかし、特にSFZは数10umしかない薄い組織であり、また、関節軟骨は硬組織であり微小領域からRNAをサンプリングする事は従来は困難であった。今回の研究で我々は、川本法により作製した関節軟骨の凍結切片から関節軟骨の各層をlaser microdissectin (LMD)により分離採取し、RNAを抽出増幅の上mRNA-seqを行い遺伝子発現を網羅的に解析し、さらにreal-time RT-PCRで発現パターンの確認を行う一連の実験手法を確立した。これにより、SFZとより深い層でそれぞれ特異的に発現している遺伝子を多数同定した(Biomed Res 35:263,2014)。 この成果を踏まえ、関節軟骨が複数の層に分化し、その構造が維持されるメカニズムについて研究を発展させている。また、今後の課題として、関節軟骨のうち特定の層にのみ発現し、かつ、全身の器官のうち関節軟骨のみに発現する遺伝子を同定し、関節軟骨各層で特異的に遺伝子発現を制御するCreマウスを作出し、関節代謝研究のさらなる発展に寄与したいと考えている。
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