研究概要 |
変形性関節症(OA)と椎間板変性(IVD)モデル動物での解析から、軟骨変性においてc-fos/AP-1→MMP-3,-13が主要なpathwayの一つであることが明らかとなった。そこで、まず上流のc-fos/AP-1をprimaryターゲットとし、AP-1/DNA複合体のX線構造解析結果を基に既にデザインされている特異的AP-1阻害薬を用い、in vitroで関節軟骨細胞および髄核細胞に対して、c-fos/AP-1阻害効果を検討した。その結果、関節軟骨細胞では炎症性サイトカイン発現の変動とともに、MMP-1, -3, -13の発現低下が認められた。一方でAdamts, Timp, Col2a1, Agc発現には大きな変化を認めなかった。 引き続きc-fos/AP-1阻害効果をin vivoで疾患動物モデルにおいて明らかにするため、C57BL6/Jマウス膝関節に実体顕微鏡下で内側半月付着部切離を行い、destabilization(DMM)モデルで緩除進行性のOAを誘導した。このモデルマウスにOA誘導後の2週目より、連日(週5日)にAP-1阻害薬を経口tubeにて投与し、長期観察を行った。この観察期間にAP-1阻害薬投与による体重変化・血液生化学変化など特記すべき有害事象を認めなかった。microCTによる解析では、AP-1阻害薬投与により骨棘形成が抑制される一方、軟骨下骨では差異を認めず、軟骨下骨代謝には大きな影響は与えないことが推測された。組織学的解析では、DMMモデルのコントロール群ではOA変化が緩徐に進行したのに対して、AP-1阻害薬投与群ではOA進行がほぼ完全に抑制されていた。これらのことは実際に経口投与が可能なc-fos/AP-1阻害薬により、OA軟骨変性進行そのものが顕著に抑制され、またそれにはc-fos/AP-1阻害とMMP-13抑制が主要な役割を果たしていることが考えられた。
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