研究課題/領域番号 |
24390352
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 浩司 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 特定准教授 (70536565)
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研究分担者 |
秋山 治彦 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60402830)
妻木 範行 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (50303938)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ルブリシン / PRG4 / 遺伝子改変マウス / マイクロアレイ / 潤滑機能 / メカニカルストレス / 関節表層 / 変形性関節症 |
研究概要 |
関節軟骨の表層には種々の糖タンパク質や脂質が存在しており、それらが協調的に作用することによって関節の低摩擦潤滑を達成している。関節の表層特異的に発現するルブリシンはPrg4遺伝子によってコードされる多糖タンパク質の一つであり、ヒアルロン酸とともに関節の潤滑機能を担い変形性関節症などへの治療効果も期待されている。しかし、関節表層の遺伝子発現メカニズムは未だ明らかにされていない。本研究の目的は、遺伝子改変マウスを用いて関節表層特異的に発現する遺伝子を網羅的に解析し、Prg4遺伝子の発現メカニズムを解析するとともに、関連遺伝子群の潤滑機能に及ぼす影響やメカニカルストレスに起因した変形性関節症への病態関与を明らかにすることである。本年度は、Prg4プロモーターによってRed Fluorescent Protein (RFP) 遺伝子を発現するトランスジェニックマウスと、Sox9遺伝子座にEnhanced Green Fluorescent Protein (EGFP) 遺伝子がノックインされたマウス(Sox9-EGFP)を用いて蛍光タンパク質を発現する関節軟骨細胞をFACSで選択的に単離し、Affymetrix社のマウスGeneChipによりPrg4遺伝子発現に関与する分子の網羅的解析を行った。RFP、EGFPによってソートされた軟骨細胞の遺伝子発現を比較することで軟骨組織の部位特異的遺伝子発現プロファイルの作成に成功した。また、Prg4プロモーターによってCreリコンビナーゼを発現する遺伝子改変マウスを作製し、GeneChipの解析から導出した種々の軟骨表層関連遺伝子のfloxedマウスと交配することで、関節表層特異的遺伝子欠損マウスを作製した結果、関節の形態に異常を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、関節軟骨表層遺伝子の発現機構に関して分子メカニズムを解明するとともに、関節軟骨の潤滑機構やメカニカルストレスに起因した変形性関節症への病態関与を明らかにすることを目指している。現在までに、Prg4プロモーターの同定およびPrg4プロモーターによってRFPを発現するトランスジェニックマウスを作製・使用し、FACSを用いた蛍光発現軟骨細胞の選択的単離によって、Prg4遺伝子関連分子の網羅的解析を行った。この際Sox9-EGFPマウスとのダブルヘミマウスを用いることで、軟骨組織の部位特異的遺伝子発現プロファイルの作成に成功しており、pathway解析等によって軟骨表層遺伝子発現の制御機構に関する知見を得た。また、当初の計画から更にin vivoでの分子機能を明らかにするために、Prg4プロモーターを用いたCreマウスを作製し、マイクロアレイの解析によって導出したPrg4関連遺伝子のfloxedマウスと交配することによって、関節表層特異的遺伝子欠損マウスによる機能解析を行った(変更点)。その結果、生後の関節形成に異常を認め、Prg4発現機構における更なる知見を得た。これらを踏まえ、メカニカルストレスに起因する変形性関節症モデルを野生型およびコンディショナルノックアウトマウスで作製し、病態進行とPrg4関連遺伝子群との関係性を検証している。
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今後の研究の推進方策 |
軟骨細胞におけるPrg4の転写やメカニカルストレスに対する分子応答を生化学的に解析する。また、Prg4関連遺伝子の(コンディショナル)ノックアウトに伴う変形性関節症の病態進行並びにメカニカルストレスに起因する外傷性の変形性関節症との関係を免疫組織学的に明らかにする。またこれらマウスの膝関節における摩擦抵抗を直接計測することでPrg4の転写やメカニカルストレス応答に関与する分子の潤滑機能に与える影響を検証し、関節表層遺伝子の発現制御機構および機能発現の解明を目指す。
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