研究課題/領域番号 |
24390355
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
二川 健 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (20263824)
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研究分担者 |
曽我部 正博 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10093428)
小林 剛 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40402565)
鈴木 穣 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (40323646)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / ユビキチンリガーゼ / 次世代シークエンサー |
研究概要 |
宇宙開発の急速な進歩および超高齢化社会が進む我が国では、廃用性筋萎縮に対する予防法や治療法の確立が急務となっている。しかしながら、未だに骨格筋による無重力感知機構は明らかにされていない。これまでの本研究により、その一端が解明されつつある。まず、筋細胞内において無重力ストレスを感知する小器官は、ミトコンドリアであることを明らかにしていた。無重力を感知したミトコンドリアは、酸化ストレス産生増大を介して筋細胞内のタンパク質分解を促進していた。この酸化ストレスの産生機構について、小胞体からのカルシウムイオン放出が引き金になることも見出した。この無重力による小胞体への影響については、現在解析中である。 また、筋肥大因子として注目していたIGF-1による副作用には、このミトコンドリア由来の酸化ストレスが重要な働きをしていることを見出していた。さらに、IGF-1の副作用を抑えうる抗酸化タンパク質としてフラタキシンを同定することに成功した。培養細胞レベルにおいて、フラタキシンの強発現が無重力による筋萎縮を抑制しうることを示すデータも蓄積されつつある。 最後に、次世代シークエンサーによるトランスクリプトーム解析も順調に進行している。具体的には、無重力ストレスにより転写過程における読み間違いが起こりやすいスポット(ホットスポット)があることを見出した。今後は、このホットスポットに存在する遺伝子を同定し、廃用性筋萎縮におけるその遺伝子の機能解析を進めている。 これらの蓄積されつつある基礎的なエビデンスに基づき、廃用性筋萎縮に対する強力な新規予防法や治療法を提案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋細胞における無重力ストレスの感知機構について、全体像がはっきりと見え始めている。具体的には、筋細胞内のミトコンドリアが無重力ストレスを感知することを見出しただけでなく、小胞体からのカルシウムイオン放出がその上流に位置することも明らかにできた。廃用性筋萎縮の予防や治療において重要であると考えられる、筋肥大因子IGF-1の副作用の抑制については、フラタキシン強発現が有効である可能性も示すことができた。次世代シークエンサーによるトランスクリプトーム解析においても、無重力ストレス応答に重要であることが示唆される遺伝子の同定につながる可能性が極めて大きくなっている。
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今後の研究の推進方策 |
概ね順調に進展しているので、当初の予定通り研究を進めていく。本研究は、培養細胞レベルであるが、このまま研究計画を遂行することで基礎的なデータを積むことができれば、臨床応用する際にスムーズに個体レベルに移行することができると確信している。将来、臨床応用が実現できることを見据えて研究を推進していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に予定していた酸化ストレス測定などの生化学実験が次年度も継続して行うこととなった。そのため平成25年度の消耗品が予定していた使用額よりも小さくなったため。 上記の繰り越しの理由の通り、生化学実験の試薬費用などに用いるため、消耗品費として使用する計画である。
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