研究課題/領域番号 |
24390364
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内田 寛治 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60302709)
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研究分担者 |
山田 芳嗣 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (30166748)
今井 英明 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70359587)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳保護 / 虚血再還流 / レミフェンタニル / 炎症 / 白血球 / 手術侵襲 |
研究概要 |
本邦の大規模データベースを用いた後ろ向き解析で、レミフェンタニル使用群(レ群)とフェンタニル単独使用群(フ群)とで、Propensity score matched解析を用いて両群の背景因子を均一化して行った結果、開頭脳動脈瘤クリッピング術後の早期予後を比較したところ、レ群がフ群と比較して、術後の在院死亡率が有意に低く(4.2 vs 7.7 %, P<0.001)、レミフェンタニル使用が、オッズ比0.52(95% confidence interval 0.37-0.74, p<0.001)で術後死亡率を下げる独立因子であることが判明した。またこの傾向は、術前の意識レベルが低下している患者集団でも同様に認められ、レミフェンタニルが、術前から虚血性ダメージを受けている脳に対しても良好に作用する可能性が示唆された。本研究結果は、英文学術雑誌に投稿、採用された (J Neurosurg Anesth. 2014, Feb 5, Epub ahead of print)。ラットを用いた脳虚血モデル作成は、Splague-Dawleyラットを用いて、当初計画した3モデルのうち、③の中大脳動脈焼灼モデルを採用、検討したが、中大脳動脈支配領域の個体差によるばらつきが顕著で、開頭、硬膜切開まで行う、開頭ストレスモデルで、炎症性メディエータの検討をする方向へ変換した。侵襲時の炎症指標のパラメータとして、末梢血液中の好中球表面上にある接着因子であるCD11bの発現量をフローサイトメトリーで観察しているが、レミフェンタニル使用群では、術直後より迅速にCD11b値が上昇し、早期に低下する傾向を見せており、より早く炎症が収束する可能性を示唆している。引き続き安定的な結果を得るべく条件検討を進めている。細胞内シグナルの検討に用いる細胞株は未だ適切なものを同定出来ていない。低酸素環境を安定的に作る準備を進めつつ、引き続き検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(理由)麻薬研究者免許取得に伴って、2013年7月より麻薬を用いた動物実験が可能となった。安定したラットの脳虚血モデルを作成することを、共同研究者と工夫を重ねたが、技術的なばらつきを克服するには至っておらず、開頭手術ストレスそのものに対する影響を見るモデル(開頭、硬膜切開まで、脳血管の焼灼をしない)に切り替えている。引き続き安定した麻酔状態、体温、人工呼吸設定、手術中のマウスの安全、酸素化の維持に留意した環境整備を行っている。細胞株を用いた研究は、低酸素培養器の条件が安定せず、引き続き適切な条件を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
動物を用いた開頭モデルでは、徐々に安定した結果が得られており、血液中白血球の表面抗原データでは、炎症パターンにレミフェンタニル使用群と不使用群で違いが観察されている。この違いを確定させた後、そのメカニズムと予後へ与える影響を検討し、実際の開頭手術における血液パラメータを、まず観察研究で検討する予定である。観察研究での結果が有望であれば、前向きな臨床研究へ検討を広げて行きたい。
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