研究課題/領域番号 |
24390365
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
川真田 樹人 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90315523)
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研究分担者 |
杉山 由紀 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (10468100)
田中 聡 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (60293510)
石田 高志 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (60531952)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 麻酔科学 / 周術期管理学 / 周術期疼痛学 / 遷延性術後痛 |
研究実績の概要 |
昨年度に続き、われわれが開発した足底筋冷却傷害モデルによる術後の遷延痛の行動学的検討を行った。すなわち、Brennanら(Pain,1996)の方法に従い足底筋切開モデルを作成し、さらに筋肉損傷モデル(Brain Res,2010)の方法を応用し、-190℃の液体窒素によって1分間冷却された金属で,切開された足底筋を1分間ずつ2回傷害した。対照として20℃の金属を用いた。体温を一定に保つために,赤外線光を用いたランプを照射するのと同時に、小動物用体温保持装置(直腸温計つき)を用い、経肛門的にラットの体温を測定しながら手術を行った。傷害作成後は5-0ナイロンで2針縫合した。足底筋を液体窒素で傷害した群は,自発痛関連行動が術後10日まで延長し、機械性痛覚過敏が術後12日目まで遷延したが、皮膚・足底筋の切開群では術後4日目までの遷延に留まった。一方、熱性痛覚過敏は足底筋を液体窒素で傷害した群と、皮膚・足底筋の切開群との痛覚過敏に関して有意差を認めなかった。 一方、、皮膚・足底筋の切開群と、皮膚切開+足底筋を液体窒素で傷害した群の組織学的検討を行ったところ、皮膚・足底筋の切開群に比べ、皮膚切開+足底筋を液体窒素で傷害した群で、足底筋における浸潤細胞の数が多く、かつ長時間、浸潤細胞が存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 筋肉損傷により創部に対する機械的侵害刺激による痛覚過敏が長時間観察できる、遷延性術後痛モデルを確立できた。 2. この遷延性術後痛モデルは、熱性痛覚過敏が見られないものの、自発痛関連行動も長時間観察でき、モダリティーに対する応答様式に特徴があることが示された。 3. 電気生理学的な検討により、本遷延性術後痛モデルで自発発射の増加、皮膚および筋肉に対する機械刺激による発射頻度の増加が見られ、行動学的検討と電気生理学的検討による結果がよく相関していると思われた。 4. 組織学的検討により、遷延性術後痛モデルでは足底筋における浸潤細胞の数と浸潤期間の延長が見られたことから、創部が治癒していても、より深部の外科的損傷を受けた組織は炎症が持続していることから、遷延性術後痛の新たな機序が想定できた。
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今後の研究の推進方策 |
われわれが新たに開発した遷延性術後痛モデルでは、足底筋における浸潤細胞の量が多く、期間が延長していることが示唆された。これらの現象と行動学的な自発痛の持続や機械刺激による痛覚過敏の延長がよく一致した。したがって、今後は浸潤した免疫細胞の種類を各種マーカーにより分類し、術後の経過に伴うproinflammatoryあるいはanti-iflammatoryのいずれ要因が主であるかを確認したい。さらに、各種モダリティーに対する痛覚過敏の特徴が異なる事から、TRPV1や他のセンサータンパクのup-regulationやdown-regulationを検討するとともに、c-fos発現脊髄後角細胞の定量を行い、遷延性術後痛の予防・治療に繋がる分子の同定を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が比較的順調に進行し、当初計画で見込んだよりも消耗品に対する費用が少なく研究の遂行を行うことができた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進展として、浸潤細胞の特徴を分別するため、免疫染色のための各種マーカーの購入に充てる予定である。
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