研究課題
吸入麻酔薬の作用機序の一つとして近年視床-大脳皮質間の神経ネットワークが注目されている。一方で吸入麻酔薬は幼年期における神経幹細胞からニューロンへの分化を抑制するという基礎実験の報告があり、今年度われわれはマウス海馬ニューロンを単離し、包括的にmRNAの発現を解析するトランスクリプトーム解析を行う実験系を確立した。マウスにおいて吸入麻酔薬を曝露させることにより、海馬ニューロンにおいてRtn4rl2遺伝子の発現を増強させると同時にLIM-homeodomain gene familyの発現を抑制させることが示唆された。Rtn4rl2遺伝子はNogo受容体を発現させるが、Nogo受容体は中枢神経において樹状細胞のミエリンへの接着に関与すると言われ、吸入麻酔薬の幼年期への曝露は神経細胞の炎症性変化を起こすというこれまでの知見を裏付けるものである。またLIM-homeodomain gene familyの葉左舷を抑制することは神経幹細胞のニューロンへの分化を抑制させる経路にLIM-homeodomain gene familyの関与を示唆するものである。さらに吸入麻酔薬は海馬ニューロンでのドーパミン受容体遺伝子の発現を促進しており、海馬ニューロンのドーパミンに対する反応を変化させている可能性が示唆された。今年度は手術モデルマウスを確立し、同様の実験手法により麻酔薬と手術侵襲による遺伝子発現プロファイルの変化、また有害事象を抑制させる治療薬の開発の二つを目的とする。
2: おおむね順調に進展している
三年目の平成26年度、当初の目的であったトランスクリプトーム解析を実施し、遺伝子の包括的な発現プロファイルを解析する実験手法を確立した。本手法を用いて様々な疾患モデルマウス、部位に対して遺伝子発現プロファイルを測定し、機序を予測するとともにin vitroの実験を組み合わせて術後機能障害の機序を究明できるものと思われる。
マウスTCニューロンにおけるトランスクリプトーム解析、手術モデルマウスにおけるTCニューロン、海馬でのトランスクリプトーム解析を行う。すでに老年マウスを複数頭飼育しており、同マウスを用いて手術モデルを作製し、トランスクリプトーム解析を通じて術後認知機能障害の機序を究明する。
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