研究課題/領域番号 |
24390373
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
河内 明宏 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (90240952)
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研究分担者 |
上田 崇 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50601598)
上田 紗弥 (伊藤 紗弥) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90534511)
沖原 宏治 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80285270)
三木 恒治 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10243239)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / PAX2 / DNAメチル化 / AR |
研究概要 |
前立腺器官形成においてPAX2はARよりも早期の段階で作用することが知られている転写因子であり、ARとは異なる機序で器官形成を制御すると考えられる。 PAX2は前立腺癌の他に乳癌や腎癌などで高発現することが知られているが,その転写制御機構を含めた機能は不明のままである。平成25年度には主にPAX2自身の標的遺伝子として同定したARについて解析を行った。 1.前立腺癌細胞株を用いたPAX2によるAR転写制御機構の解明:in vitroにおいてPAX2がAR遺伝子の脱メチル化を介して発現を制御する因子であることが判明した。 2.ヌードマウス、前立腺癌患者検体を用いたPAX2とAR相互作用の解析:ヌードマウス皮下移植モデルマウスを用いてPAX2ノックダウンによって腫瘍のgrowthとともにARの発現が抑制されることが判明した。また前立腺癌患者検体においてPAX2とARの発現に相関が観察された。 3.モデルショウジョウバエを用いたPAX2相互作用因子のスクリーニング:PAX2のショウジョウバエホモログpariedが知られている。ショウジョウバエにおける前立腺相同組織accesory glandにpaiedが発現し分化に重要な機能を果たすことが知られている。accesory glandの形態を指標にpairedとの相互作用因子を取得し、そのヒトホモログについて解析を施行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に我々はPAX2自身の機能解析を細胞株を用いたin vitroのアッセイで行った。具体的にはアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株においてPAX2をノックダウンし、cell countによる増殖速度の判定やinvasion assayによる浸潤度の判定を行った結果PAX2ノックダウンで浸潤、増殖が抑制されることが判明した。 現在までにPAX2転写共役因子スクリーニングに用いるモデルショウジョウバエが構築でき、新規因子Xがいくつか取得できた。その因子Xのいくつかが平成24年度に構築した癌細胞の浸潤モデル、invasion asssayにおいて浸潤を制御する結果が得られた。すなわちPAX2と同方向に働く因子であり、ショウジョウバエを用いたスクリーニングの結果得られた新規因子Xはヒト前立腺癌における新規治療標的である可能性が考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
モデルショウジョウバエを用いたPAX2転写共役因子のスクリーニングの結果取得できた因子Xのin vitroの解析を引き続き行う。またモデルマウスを用いて因子Xの前立腺癌転移に対する機能を解析する。Thermo SCIENTIFIC社のTRIPZ lentiviral inducible shRNAmir systemを用いてドキシサイクリン投与によりX がノックダウンされ、かつ蛍光色素(tomato)により標識される22Rv1細胞株を作成する。22Rv1細胞はヌードマウスに静脈注射することにより全身に転移を形成することが報告されている(Francisco A et al (1988).Cancer Research,48,6876-6881.)。我々が作成した細胞株をヌードマウスに静脈注射し、ドキシサイクリン投与によってコントロール細胞(shCont-tomato)とXノックダウン細胞(shX-tomato)で転移能に差があるか検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度までにPAX2転写共役因子スクリーニングに用いるモデルショウジョウバエが構築でき、新規因子Xがいくつか取得できた。その因子Xのいくつかが平成24年度に構築した癌細胞の浸潤モデル、invasion asssayにおいて浸潤を制御する結果が得られた。すなわちPAX2と同方向に働く因子であり、ショウジョウバエを用いたスクリーニングの結果得られた新規因子Xはヒト前立腺癌における新規治療標的である可能性が考えられる。これらの本年度の実験においては比較的順調に進行したため、予定より使用額が少なくて済んだ。 今後、因子Xの機能解析を行うために、残りの研究費が必要であり、可能な限りの機能を解析する予定である。
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