研究課題
腎細胞癌を特徴付ける強い転移能と血管新生能に着目して、腎細胞癌の浸潤・転移機構の解析とともに分子標的治療抵抗性の分子病理学的解析を中心に研究した。タバコをはじめとした外因性物質誘導性発癌に関わる転写因子aryl hydrocarbon receptor (AhR) の発現が、腎細胞癌の浸潤・転移に関与することを見出した。120名の腎細胞癌患者の病理組織を免疫組織学的に検討し、AhRの活性化が予後不良因子であることを示した。細胞株を使用したin vitroの実験で、AhRを活性化するTCDDを投与すると浸潤能が亢進した。siRNAによってAhRの発現を減弱化すると浸潤能は低下した。AhRは腎細胞癌の治療標的分子となりうる可能性を示した。腎細胞癌における予後不良因子である紡錘細胞癌成分に関しては、上皮―間葉転換(EMT)に関わるSnailが紡錘細胞癌への移行に中心的な役割を果たし、MMP-2と MMP-9の発現亢進により浸潤・転移を促進することを示した。淡明細胞型腎細胞癌ではVHL遺伝子の不活化によるHIF-VEGF分子経路が血管新生と癌細胞増殖に関与しており、転移性淡明細胞型腎細胞癌では同経路を阻害するスニチニブなどのtyrosine kinase inhibitor (TKI)による分子標的治療が第一選択となっている。TKI治療後残存癌組織では微小血管密度は低下を示すも、残存癌細胞の多くは癌幹細胞マーカーでもあるCD44とADAM17が陽性であり、これらがTKI治療抵抗性に関わる可能性を示した。腎癌細胞株を用いた研究では低酸素刺激によりCD44の発現が誘導されることを示した。TKIによる血管新生阻害によって低酸素環境が細胞内の代謝経路を変化させ、CD44をはじめとするがん幹細胞性分子を誘導し、治療抵抗性獲得に関与していることが示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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