研究課題
基盤研究(B)
本研究は、婦人科がん治療で頻用される抗がん剤であるCDDPに焦点を絞った上で、がん細胞のCDDP薬剤耐性をキャンセルできる分子の探索を目的とした研究である。全ゲノムスケールsiRNAライブラリーを利用したハイスループット・スクリーニングでCDDP耐性癌細胞において少量のCDDP投与と合成致死作用を示す分子を探索する。この研究は創薬につながる新規治療標的の同定、および臨床応用への橋渡し研究につなげる意義がある。本年度の研究成果は以下のとおりである。A:siRNAライブラリーを用いたハイスループット・スクリーニングシスプラチン耐性卵巣がん細胞株のペアーを用いて、siRNA導入後に対象の抗がん剤処理群と無処理群に分けてそれぞれの生存率を測定した。抗がん剤処理群での比較生存率が無処理群より著明に低下した113遺伝子をHitとして後述する解析対象とした。siRNAライブラリーには6650遺伝子に加えて複数の陽性対照および陰性対照コントロールが含まれている。細胞生存率はPromega社のCell Titer Gloで細胞処理し、Perkin Elmer社のEn VisionでLuminescenceを測定し、コントロールとの相対生存率として計算した。スクリーニング工程は384wellフォーマットで専用ロボットを用いて大量高速処理で行い、結果の解析および作図は専門ソフトウエア(Miner3D)を用いた。(B):IPAを用いたネットワーク解析およびデータベース解析を統合したBioinfomatics解析siRNAスクリーニング後にBioinfomatics解析による2次絞込みを行い、治療対象として有望な33遺伝子を抽出した。これらの遺伝子群については発現量解析(RT-PCR、IHC、WB)および臨床経過との相関を今後詳細に検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究の最も重要なprimary screeningが成功して、十分な候補遺伝子群が抽出できた。これらの遺伝子群には、今まで薬剤耐性で重要な役割を持つことが知られている分子と役割の不明な分子群が混在している。これは研究の道筋が正しい事と、今後の研究の発展により新規治療標的を発見できる可能性が高い事を示していると考えている。
当初の予定通り、スクリーニングで見つかった分子群についてin vitroおよびin vivoでの検証実験を進めて、最も有望な分子を治療標的として同定する。
今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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