研究課題
早発閉経や閉経前後の不妊患者では、卵胞が発育せず自らの卵子を用いた妊娠は非常に困難である。申請者は最近、PTEN阻害剤とPI3K活性化剤を用いた休眠原始卵胞の人為的活性化に成功した。本研究は、本法の臨床応用により、提供卵子による治療以外に確実な方法がないこれらの患者の卵巣の卵子形成能を再生させ、自らの卵子で妊娠する新たな治療法を確立することが目的である。本年度は、申請者が開発したヒト休眠原始卵胞の活性化技術を更に改良して、より効率よく原始卵胞を活性化する方法を見出すため、1. 卵巣自家移植の最適部位の同定と移植卵巣の生着を促進させる因子の同定、2. ヒト初期卵胞発育を促進する因子の同定と初期卵胞発育の制御機構の解明, 3. 移植胚の着床率を高めるための対策の確立を行った。前年度の研究で、卵巣自家移植の至適部位は卵管漿膜下であることが明らかになった。さらに卵巣の生着効率を高めるため、移植卵巣の生着を促進させる因子の同定を試みた。動物実験に置いて、移植卵巣をゲル内に導入した種々の血管新生因子とともに移植したところ、生着率が高まり多くの卵胞発育を認めた。DNAマイクロアレイを応用した初期卵胞発育の促進因子を網羅的同定を試み、候補因子を探索した。最終稿補因子の中から、C-type natriuretic peptide(CNP)およびR-spondin2を新規の初期卵胞発育を促進する因子として同定した。CNPは顆粒膜細胞より産生され、2次卵胞以降の発育を促進し、R-spondin2は卵子より産生され、1次卵胞以降の発育を促進した。また、卵巣を自家移植したこれらの患者において、適切な子宮内膜環境を構築するためのプロトコールの確立を行い、高い着床率を得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
本年度に予定していた研究計画である、1. 活性化卵巣自家移植法の確立、2. 初期卵胞発育促進法の開発、3. 移植胚着床促進法の開発、は順調に進行し、成果を得ている。
次年度は予定していた、1. 活性化卵巣自家移植法の確立、2. 初期卵胞発育促進法の開発、3. 移植胚着床促進法の開発の継続研究をおこない、更に 胚の割球を用いた診断的アッセイの確立を行う。
本年度に予定していた研究計画である、1. 活性化卵巣自家移植法の確立、2. 初期卵胞発育促進法の開発、3. 移植胚着床促進法の開発、は当初より平成25~26年度の2年間で行う予定を立てており、研究の進行上、次年度に多くの予算を使用することとなった。特に、 初期卵胞発育促進法の開発は多数の候補因子の機能解析を進める必要があり、本年度は2つの因子に対して研究を行い手法を確立したが、他の因子は同じ系でまとめて解析を行うことで、時間と費用を節約できると考えている。予定通り、次年度の研究計画である、1. 活性化卵巣自家移植法の確立、2. 初期卵胞発育促進法の開発、3. 移植胚着床促進法の開発、4. 胚の割球を用いた診断的アッセイの確立行い、その物品費、旅費、論文出版費などに充てる。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 11件) 図書 (7件)
FASEB J
巻: 27 ページ: 2175-2184
10.1096/fj.12-223412
J Mamm Ova Res
巻: 30 ページ: 24-29
Proc Natl Acad Sci USA
巻: 110 ページ: 17474-17479
10.1073/pnas.1312830110
Cancer Med
巻: 2 ページ: 849-861
10.1002/cam4
J Mammal Ova Res
巻: 31 ページ: 45-51
産婦人科の実際
巻: 62 ページ: 1405-1411