研究課題/領域番号 |
24390379
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
金山 尚裕 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70204550)
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研究分担者 |
杉原 一廣 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (00265878)
鈴木 一有 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (50456571)
内田 季之 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (90570234)
田村 直顕 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (90402370)
谷口 千津子 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (20397425)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 羊水塞栓症 / 羊水マーカー / アナフィラキシー / 補体 / C1インヒビター / DIC |
研究概要 |
羊水塞栓症は日本における妊産婦死亡の最大の原因であることが種々の調査で明らかになっている。浜松医科大学には全国から羊水塞栓症の臨床情報、血清、組織が送付されている。これらを解析することにより羊水塞栓症の病因・病態を解明し、羊水塞栓症の救命法、予防法を見出すことが本研究の目的である。平成25年度の成果を以下に示す。 1)羊水塞栓症の新しい分類を提唱した。臨床的羊水塞栓症で剖検のないものは心肺虚脱型羊水塞栓症とDIC先行型羊水塞栓症に分類する。臨床的羊水塞栓症で剖検のあるもので肺に羊水成分を認めるものを羊水塞栓症、臨床的羊水塞栓症であるが肺に羊水成分を認めず、子宮に子宮弛緩症、子宮血管に羊水成分を検出、アナフィラクトイド反応を認めるものを子宮型羊水塞栓症と呼ぶ。 2)臨床情報の解析から心肺虚脱型羊水塞栓症はDIC先行型羊水塞栓症より経過が急激で予後が不良であった。 3)羊水塞栓症の子宮組織を解析すると子宮弛緩症、DIC、補体の活性化が特徴でありアナフィラクトイド反応が起こっていた。この特徴はDIC先行型羊水塞栓症により顕著であった。子宮弛緩症、DIC、補体活性化を抑制することが羊水塞栓症の病態改善の鍵であることがわかった。 4)羊水塞栓症の子宮弛緩、DIC、補体活性化を惹起する原因として生体防御反応物質であるC1インヒビターに着目した。C1インヒビターを測定すると羊水塞栓症では正常産婦に比較し有意に低値であった。C1インヒビターの低下が顕著の症例ほどアナフィラクトイド反応が強く、死亡例が多くなった。C1インヒビターの測定は羊水塞栓症の病態把握に有用であることが判明した。妊娠後期にC1インヒビターが低値例は羊水塞栓症のリスク因子であることが推測された。C1インヒビターは遺伝性血管浮腫の治療薬として保険収載されている。このC1インヒビターを羊水塞栓症に投与することにより羊水塞栓症の病態を改善させる可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C1インヒビターは羊水塞栓症の病態に関連マーカーであることが見出された。羊水塞栓症においてC1インヒビター低値例は死亡例が多いことも明らかになった。C1インヒビターは羊水塞栓症の病態を適切に表すマーカーであることが明らかになった。またC1インヒビターは遺伝性血管浮腫の治療薬として保険収載されていることから、羊水塞栓症においてC1インヒビター投与は羊水塞栓症の救命に寄与することが予想された。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度も引き続き全国の羊水塞栓症の血清、組織を解析し羊水塞栓症の病因、病態、治療法、予防法を検討する。特にC1インヒビターが羊水塞栓症の病因、病態に繋がることが判明したので、C1インヒビターを中心にさらなる検討を進める。またC1インヒビター投与が羊水塞栓症の救命法になるか否かについて多施設共同研究を平成26年度はスタートさせる。
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次年度の研究費の使用計画 |
全国からの組織検体(肺、子宮)を解析しているが、昨年度は予想より少なく解析費用に余剰が生じた。C1インヒビターの基礎的研究の研究の経費が予想より少なかったため余剰が生じた。 肺、子宮の組織解析はより詳細に解析する。そのため各種抗体を用いて施行するので 予定通り予算を使用する予定である。
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