研究課題/領域番号 |
24390380
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
梶山 広明 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (00345886)
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研究分担者 |
柴田 清住 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90335026)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 上皮間葉転換(EMT) / 卵巣癌 / 腹膜播種 / 微小環境 / 薬剤耐性 / 転移浸潤 / 腹膜中皮 / ストレス誘導転移 |
研究概要 |
本研究の主たる目的は以下の二点を明らかにすることであるである。すなわち。(1)ALX-1を初めとしたEMT誘導転写因子の発現亢進性を獲得した高転移性卵巣癌細胞が各種微少環境ストレス抵抗性をいかに獲得していくのか、(2)腫瘍細胞のCounterpartである腹膜中皮が癌関連中皮細胞(CAMs)というEMT化によって腫瘍と協調の上、いかに卵巣癌腹膜播種を生じるのか。初年度にあたる本年度の研究成果は、以下の項目を明らかにしえたことである。1)卵巣癌細胞はTGFβ1のパラクライン作用により腹膜中皮をCAMsへと変化させることで、微小環境をTGFβ1濃度の高い環境へと変え、CAMsからのMMP-2,9を利用して腹膜播種形成に有利な環境を整えていた。2)我々はすでにALX1がSnail発現の調節を通じてEMT決定因子として機能していることを見いだしているが、その上流因子は不明であった。今回、ALX3およびALX4という二つALX1 homologuesがEMTおよび癌の転移浸潤に中心的役割を果たすことを明らかにした。SK0V3細胞にsiRNAを導入しALX4の発現を抑制すると、EMTの上皮マーカーであるE-cadherinの発現亢進が確認された。さらにこの遺伝子をSKOV3に強制発現させると、E-cadherinの発現が低下し、N-cadherin、VimentinなどのEMTマーカータンパク質の発現が亢進し、EMTが誘導されるメカニズムを明らかにした。3)腹膜転移巣で産生される腹膜中皮からのFibronectinが微少環境形成に寄与していることを見いだした。Fibronectinは転写レベルで亢進していたため、その抑制を目的に、標的としうるmicroRNAを探索した。TargetScan等の標的予測アルゴリズムを用いた解析により、miR-200ファミリー(miR-200s)が候補として見出された。実際に、Fibronectinの3'-UTRを用いたルシフェラーゼレポーターアッセイにより、miR-200sがFibronectinを直接抑制することが判明した。4)新規EMT誘導転写因子PLAGL2の機能解析を試みた。GST beadsを用いたプルダウンアッセイを行い、それぞれのGTPaseの活性の変化を検討したところ、PLAGL2の抑制によりRhoAの活性が上昇した。 また、逆にRac1の活性は抑制される結果となった。PLAGL2はsmall GTPaseの活性を調節することにより、細胞運動およびアクチン骨格の構成を制御していることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は卵巣癌の腹膜播種抑制と薬剤耐性克服を狙うものであり腫瘍-中皮の両面から戦略的EMTターゲット治療を目指す研究である。従って腫瘍細胞側と腹膜中皮側の二つの側面からの平行した研究の遂行が重要である。初年度はこの両サイドからの研究成果が得られており、概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
卵巣癌の腹膜播種形成の微小環境メカニズムを明確化するとともに、ALX-1やPLAG2などのEMT誘導転写因子の腫瘍-腹膜中皮のダブルノックダウンによる播種抑制効果を明らかにする。効率的に抗腫瘍効果を可視化するため、in vivo imaging systemを適宜用いる。
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