研究課題
本研究の目的は、ALX-1/4, HOXB2, ZEB-1, PLAGL2を初めとしたEMT転写因子の発現亢進性を獲得した高転移性卵巣癌細胞が微少環境ストレス抵抗性を獲得していくプロセスとメカニズムを詳細に検討することである。研究2年目にあたる本年の研究成果は以下の通りである。1. 初年度は主としてALX4のEMT誘導性を明らかにしたが、本年度は、in vitro invasion assayとcolony forming assayによる機能解析の結果、ALX4発現と浸潤性/非足場依存増殖能がポジティブにリンクしていることを明らかとした。また、ALX4の遺伝子発現抑制により、Slugの発現が抑制され、逆に、ALX4の強制発現によりSlugの発現は亢進するというEMT転写因子同士の双方向性リンクが示唆された。2. HOXB13とALX4は複合体を形成し、これらの相互作用がSlugの発現の調節メカニズムであることが判明した。3. ZEB1および誘導因子TGF-βに注目し、薬剤耐性化した卵巣癌が二次的な転移・薬剤耐性能を獲得するメカニズムを検討した。結果的に、NOS2TR/NOS3TR細胞(パクリタキセル耐性卵巣癌細胞)では、(1)ZEB1ノックダウンによる転移能低下および抗癌剤感受性の上昇のメカニズムとして、METの誘導およびAkt活性の抑制によるアポトーシスの関与が示唆された。(2)TGF-β添加により、NOS2TR/NOS3TR細胞はZEB1の発現とともにEMTが誘導され、p-smad2およびTGFβ-R1発現の亢進を認めた。これより薬剤耐性卵巣癌は親株と比較し、 TGF-βシグナル経路が活性化され、EMTの誘導を通じて、転移能が亢進するメカニズムが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究プロジェクトの構成テーマの一つであるEMT転写因子PLAGL2に関し「Carcinogenesis」に投稿し、アクセプトされた(PLAGL2はsmall GTPaseの活性を調節することにより、細胞運動及びアクチン骨格の構成を制御する)。それ以外のテーマについても、概ね順調に進展しているといえる。
腹膜中皮細胞関連研究:中皮細胞が不死化されていないため、その都度のprimary cultureで得られ、研究に使用されている。研究の効率化のためにも不死化細胞を作成する。
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Carcinogenesis
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