研究課題
内膜の初代培養細胞および幹細胞は、感染効率(遺伝子導入率)が低いうえに、手術検体からの入手や取扱いが容易でないため、それらに代えて、内膜由来の不死化細胞株および癌細胞を用いて、磁性体を用いた内膜症・腺筋症モデルマウスの開発とその検証を行った。さらに、磁性体を用いて目的とする細胞を選別し集積させる至適条件を設定するためには、標識蛋白を安定的に発現する細胞株が必要となる。そこで、上記の2種類の細胞株それぞれに、非機能膜型受容体 (membrane X receptor, mXR)、発光蛋白CBR、および蛍光蛋白GFPの3つを同時に発現することが可能なレンチウイルスを感染させた。その後に、GFPを高発現する細胞をセルソーターで2回選別し、GFP高発現細胞を分取してフローサイトメーターで解析したところ、標識蛋白全てを安定的に発現することが判明し、これらを大量に培養して細胞株のストックを確保した。これらをそれぞれ免疫不全マウスの腹腔内に注入するとともに、「ネオジム磁石丸型」などの複数個のミニ磁石を体外あるいは体内に留置させることにより、任意の場所に標識細胞を集積させて、異所性病変の作成を試みた。長期間に亘る移植細胞の振る舞いをbioluminescence imaging(BLI)を用いて非侵襲的且つリアルタイムに観察したが、内膜癌細胞株は増殖速度が速く長期の観察では予定期間内に移植マウスが癌死してしまった。一方、内膜不死化細胞株では、通常移植だけでは生着しないが、このシステムを用いると、磁石留置場所の近傍に集中して生着した病変が確認された。
3: やや遅れている
細胞の種類を代えることで、磁性体を用いた内膜症・腺筋症モデルマウスの開発戦略が妥当で実行可能であることが判明したが、その基盤知見や技術を本来の目的とする細胞にはまだフィードバック出来ていない点で、「(3)やや遅れている。」とした。
これまでに引き続いて、磁性体を用いた子宮内膜症・腺筋症モデルマウスの開発および確立とその疾患モデルにおける幹細胞の修飾とその影響に関する検討を行う。すなわち、1)磁性体標識発光内膜細胞の作製、2)磁性体による標識発光内膜細胞のin vivo集積と病変作成、3)生物発光イメージング、4)マウス宿主への免疫学的介入、などの諸点について、これまでに引き続いて内膜症・腺筋症モデルを更にブラッシュアップする。さらに、この系に標識した幹細胞を混在させて、病変形成における幹細胞の振る舞いを検討する。特に、内膜だけでなく子宮筋成分を幹細胞候補集団に混在させることにより、それぞれがニッチとして幹細胞の振る舞いをどのように規定するのかを調べる。これらをふまえたうえで、この幹細胞に既報の内膜症誘導・促進因子の候補遺伝子(PTEN、RAS、CDNK2BASあるいはWNT4)について機能変異を導入することで、病変形成にどのような影響が及ぶかについても病理組織学的ならびに生化学的に検討する。またそれぞれのステージで標識細胞を分取しオミックス解析に供するなどして、各ステップにおいて、どのような遺伝子あるいはその産物がどのような発現ならびに役割を果たすのかについても調べる。以上については、丸山が主に研究の企画と統括を行う。内田がウイルス・ベクター作成と細胞培養などの主にin vitro実験を、升田が移植や発光イメージングといったin vivo実験を行い、丸山が総合的にデータを解析し、得られた結果を取りまとめ学会・論文発表を行う。
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。次年度の研究費と併せて消耗品購入に充てる予定である。
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