研究課題/領域番号 |
24390382
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
早川 智 日本大学, 医学部, 教授 (30238084)
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研究分担者 |
相澤 志保子 日本大学, 医学部, 助教 (30513858)
泉 泰之 日本大学, 医学部, 研究員 (50459872)
本多 三男 日本大学, 医学部, 客員教授 (20117378)
牛島 廣治 日本大学, 医学部, 客員教授 (10091068)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胎盤関門 / 垂直感染 / インフルエンザ / HIV / 妊娠高血圧症候群 / マクロライド系抗菌薬 |
研究概要 |
胎児へのウイルス感染は流早産や奇形,永続的な神経障害の原因となる.胎盤を介した子宮内感染の機序を解明するため、胎盤由来の組織幹細胞とすでに樹立された不死化絨毛細胞へのウイルス感染を解析した。その結果、H3N2インフルエンザウイルスはplacental stemやcytotrophoblastに比べ分化したsyncytialtrophoblastの感受性が低いこと,H1N1ウイルスはいずれの細胞でもウイルスRNA・タンパクの合成は見られるが、培養液中へのウイルスの放出はきわめて低いことから、インフルエンザウイルスの遺伝子型により妊婦・胎児への影響が異なる現象のウイルス学的背景の一部が明らかになった。CXCR-4指向性のHIV-LAIについては、リンパ球やマクロファージに比較して極めて低効率であるがtrophoblastに対してCD4,CXCR-4非依存性の感染を生じることが明らかになった。 ただ、provirusの組み込み量は感染ウイルス量に依存するものの、ウイルス複製と放出は非常に低効率であり、HIVが感染してもウイルス粒子を放出しないplacental barrierが機能している可能性が示唆された。更に、invasive trophoblast}こおいてウイルス感染細胞の基質浸潤能が著しく低下することから、妊娠初期における血管改築が阻害される可能性が示唆された。この知見はHIV感染妊婦で血中ウイルス量と妊娠高血圧症候群の発症リスクが相関することを裏付けるものである。治療的介入の基礎的検討のためマクロライド系抗菌薬の作用を検討した。絨毛細胞にウイルス核酸や細菌菌体成分などのTLRリガンドを添加すると、量依存性のアポトーシスを生じるが、この系にマクロライド系の抗菌薬を添加するとアポトーシスが抑制された。これは、抗菌作用とは別の分子シャペロン効果に基づくものと推定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インフルエンザおよびHIVについては当初の予定通り進行しているが他のウイルスは分与や研究室における継代がまだ確立していない。絨毛については、不死化絨毛株、絨毛癌細胞株を使用して興味ある結果を得ているが初代培養幹細胞の系がまだ安定していない。ロタウイルスについては臨床疫学的に興味ある結果を得たが、胎盤由来細胞に感染させるには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
風疹ウイルス,CMVについてはこれらのウイルスを保有する研究者より分与の内諾を得ており、本学のバイオリスク管理委員会に申請中である。胎盤絨毛幹細胞の分離と分化誘導については研究協両者のDr Mikiと方法の確立を急いでいる。
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