研究課題/領域番号 |
24390392
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石田 晋 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10245558)
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研究分担者 |
小澤 洋子 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90265885)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ドラッグデリバリーシステム / レニン・アンジオテンシン / 後眼部失明疾患 |
研究概要 |
わが国における失明原因の上位を占める眼疾患には、糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・緑内障、さらにベーチェット病などの網膜ぶどう膜炎がある。これら失明疾患の共通点は、網膜神経・血管病態をともなう後眼部疾患であることと長期に経過する慢性疾患であることで、その薬物治療には(1)良好な後眼部への薬剤移行性と(2)反復投与を可能とする投与経路の2点が求められる。現在、点眼製剤、硝子体内注射、副腎皮質ステロイド剤内服などが上記疾患の治療となっているが、それぞれ上記の2点については完全に克服できていないという現状があり、これら疾患に対する新しい薬物投与デバイスの開発が必要となっている。本研究の目的は、(1)安全かつ有効な長期間にわたる後眼部への局所投与を実現するため、新しいドラッグデリバリーシステムとして強膜リングデバイスを開発すること、(2)血管および神経病態の双方に共通に介在するメカニズムとして眼組織レニン-アンジオテンシン系をターゲットとした強膜リング療法の安全性および有効性につき前臨床試験を行うことである。 今年度は、エンドトキシン誘発ぶどう膜炎モデルにおける結膜リングの有効性について検討した。ARB(バルサルタン)に先立ち、ステロイド製剤(デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム)を含有させた結膜リングを用いて実験をおこなった。エンドトキシン誘発ぶどう膜炎モデルの網膜おいて、炎症関連分子の一つであるmonocyte chemotactic protein (MCP)-1の発現が、ステロイド含有結膜リングによって抑制されることを確認した。現在は本モデルにおける他の炎症関連分子の検討、またARB含有結膜リングを用いたエンドトキシン誘発ぶどう膜炎モデルおよびレーザー誘導脈絡膜新生血管モデルにおける炎症・血管新生抑制効果を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
十分な薬剤量を含有するために素材の検討に時間を要したが、カチオン性単量体を配合することによって担保可能な薬剤量が増加し、エンドトキシン誘発ぶどう膜炎モデルの網膜において亢進したMCP-1 mRNAの発現がステロイド含有結膜リングによって抑制されることを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、引き続き①ステロイド含有結膜リングを用いてエンドトキシン誘発ぶどう膜炎モデルに関連した他の分子intercelullar adhesion molecule (ICAM)-1, interleukin (IL)-6のmRNA発現の変化をリアルタイムPCR法で検討する。ARB含有結膜リングを用いた試験では、エンドトキシン誘発ぶどう膜炎モデルの炎症抑制効果を②レクチン灌流ラベル法による網膜血管に対する白血球接着の評価と③リアルタイムPCR法によるMCP-1, ICAM-1, IL-6のmRNA量の測定で検討し、レーザー誘導脈絡膜新生血管モデルの血管新生抑制効果を④フラットマウント法による脈絡膜新生血管面積の測定で検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画に沿って、研究費は順調に使用されている。一部の研究費が残存していたが、次年度の研究費として繰越を行った。 前述の検討が終了していない平成26年度に施行予定であった実験費用に使用する予定である。
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