研究課題
本研究の目的は、安全かつ有効な長期間にわたる後眼部への局所投与を実現するため、新しいドラッグデリバリーシステムとして強膜リングデバイスを開発することである。今年度は、昨年度に引き続きエンドトキシン誘発ぶどう膜炎モデルにおけるステロイド(デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム)含有結膜リングの有効性について検討した。昨年度は、ステロイド含有結膜リングがエンドトキシン誘発ぶどう膜炎モデルの網膜において炎症関連分子の一つであるmonocyte chemotactic protein (MCP)-1の発現を抑制することが示せたが、今年度検討をおこなった炎症性サイトカインInterleukin-6 (IL-6), tumor necrosis factor-α (TNF-α)に関しては、ステロイド含有結膜リング装着後3時間の時点で発現抑制は認められなかった。また、白血球接着分子であるintercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1)についても、弱い抑制傾向は認められたものの統計学的有意差は認められなかった。また、ステロイド含有結膜リングが眼表面組織(角膜、球結膜、眼瞼結膜、眼瞼組織など)に与える侵襲性を評価するために、各組織のヘマトキシリン・エオジン染色を施行して炎症細胞の浸潤を検討したが、装用群と非装用群の間に差は認められなかった。本検討結果は、ステロイド含有結膜リングの顔表面に対する安全性を示していた。
2: おおむね順調に進展している
MCP-1以外の炎症関連分子はステロイド含有結膜リングによってその発現が抑制されなかった。そのため、現在その原因を確認中であり、計画に少しの遅れは生じているもののおおむね順調に進展していると考えている。
次年度は、エンドトキシン誘発ぶどう膜炎モデルの炎症抑制効果(MCP-1, TNF-α, ICAM-1, IL-6の抑制効果)を再検討する予定である。また、デバイス24時間装用後の角膜障害の程度をフルオレセイン染色を用いて検討することで、結膜リングの眼局所における安全性を評価する予定である。
研究計画に沿って、研究費は順調に使用されている。一部の研究費が残存していたが、次年度の研究費として繰越を行った。
平成27年度に施行予定の実験費用に使用する予定である。
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