研究実績の概要 |
既に確立された細胞株を用いた研究では、肝芽腫細胞株(HepG2, HuH6)、横紋筋肉腫細胞株(Rh30, KYM-1, RMS-YM, RD)、神経芽腫細胞株(LAN5)、ラブドイド腫瘍株(W4)について候補腫瘍幹細胞マーカー(CD13, CD44, CD44v, CD133)の発現をFACSにて評価した。CD44は全ての腫瘍株で発現が確認されたが、一部の成人癌で腫瘍幹細胞との密接な関係を指摘されるCD44vの発現は上記小児固形腫瘍細胞株ではみられなかった。 肝芽腫細胞株(HepG2, HuH6)ではFACSにてCD13の表出がそれぞれ約50%,10%に認められた。そのためHuH6株でCD13陽性細胞をソーティングし、SCID-NODマウスにenrichして移植した。bulk細胞では腫瘍を形成したのに対して1/10(1.0x104),1/100(1.0x103), 1/1000(1.0x102)のいずれのenrichに対しても16週経過しても腫瘍は形成されなかった。肝芽腫においてCD13陽性細胞に対するCD13阻害剤であるウベニクス(ベスタチン)の造腫瘍阻害効果をみる実験が進行中である。 肝芽腫細胞株(HepG2, HuH6)においてCDDPとトラニラストの腫瘍幹細胞増殖抑制効果を検討する研究では両株とも併用群で腫瘍細胞障害の増強傾向が認められたが、幹細胞マーカーCD44vやCD133の発現は半定量PCR、免疫化学定量ともにHepG2株で増加、HuH6株で低下し、細胞株により異なる機序が働くことが示唆された。 このほか今年度より新たに骨肉腫様細胞における基礎的検討を開始した。 臨床検体より循環腫瘍細胞(CTC)や微小残存腫瘍細胞(MRD)を採取し、株化する研究に関しては、進行神経芽細胞腫2例で検体を保存し、肝腫瘍4例でも腫瘍組織検体を保管したが、株化は成功していない。
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