研究課題/領域番号 |
24390399
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
森本 尚樹 関西医科大学, 医学部, 講師 (40378641)
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研究分担者 |
益岡 弘 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00600496)
鈴木 茂彦 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30187728)
河合 勝也 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90273458)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再生医療 / 人工真皮 / 細胞治療 / 細胞成長因子 |
研究実績の概要 |
平成25年度までの検討で、我々が開発した細胞成長因子保持型人工真皮からbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)以外の細胞成長因子の保持・徐放性能について検討した。具体的には、濃厚血小板製剤より血小板を活性化させ得られる細胞増殖因子であるPL(Platelet lysate、血小板分解産物)を用いて検討を行ない、PLの主要成分であるPDGF(血小板由来細胞増殖因子)、TGF-β(形質転換殖因子)を本人工真皮が保持・吸着し、分解と共に徐放することを確認した。これらの結果を踏まえ、26年度は①本人工真皮とPLの併用による創傷治癒促進効果の検討②本人工真皮と脂肪組織由来幹細胞を用いた脂肪形成の検討を行った。 ①本人工真皮とPLの併用による創傷治癒促進効果の検討 PLを5倍程度まで濃縮しても本人工真皮に保持、吸着、徐放されることを確認した。また、PLを含浸させた人工真皮に創傷治癒促進効果があることもマウスを用いた動物実験で確認した。C57BLマウスに皮膚欠損創を作成し、本人工真皮にbFGFあるいはPL(5倍程度の濃度を作成)を含浸させ、治癒過程を比較したが、bFGF7μg/cm2含浸群と比較して、2倍濃度のPL含浸群で同等の創傷治癒促進効果(創面積縮小、新生上皮距離進展、血管新生)が認められた。 ②本人工真皮と脂肪組織由来幹細胞を用いた脂肪形成の検討 本人工真皮を細胞の足場として用い、脂肪が形成されることを確認した。ヒト細胞は手術時の余剰検体より患者の同意を得て採取、培養したものを用いた。本人工真皮にはbFGFを含浸し、ヒト脂肪組織由来幹細胞を播種、ヌードマウス皮下に移植した。移植半年で組織採取を行った。脂肪組織定量的評価(重量、組織切片での評価)での結果、bFGF1μg/cm2含浸群で最も脂肪形成が促進されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究によって、我々が開発した細胞成長因子保持型人工真皮からbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)以外の細胞成長因子の保持・徐放性能であることが確認できた。具体的には、濃厚血小板製剤より血小板を活性化させ得られる細胞増殖因子であるPL(Platelet lysate、血小板分解産物)を用いて検討を行ない、PLの主要成分であるPDGF(血小板由来細胞増殖因子)、TGF-β(形質転換殖因子)を本人工真皮が保持・吸着し、分解と共に徐放することを確認した。平成26年度の検討の結果、PLについては2倍に濃縮する方がマウスでの創傷治癒促進効果がることが示された。これは今後の臨床応用をする上で非常に有用な非臨床データである。また、本研究では新規人工真皮を軟部組織再生の足場として使用する可能性について検討することが次の目的であった。平成26年度の検討の結果、新規人工真皮が脂肪再生の足場として使用できることが確認でき、bFGF1μg/cm2含浸群が最も再生がよいことが判明した。これも今後の臨床応用をする上で非常に有用な非臨床データである。以上の様に本研究目的が順調に確認できていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
新規人工真皮は治験も終了し、承認申請準備中であり、数年以内に承認される可能性が高いと考えている。しかしながら、本研究期間は平成27、28年度しか残されておらず、この間に新規人工真皮が製品化され、臨床研究を実施できる目処が立っていない。このため、今後は、本人工真皮と同等の作用機序(成長因子保持、徐放効果)を持つ基材(ゼラチンハイドロゲルシート)と多血小板血漿を用いた臨床試験を本人工真皮の臨床試験に先行して行うこととした。この臨床試験プロトコルは、承認後に行う予定である本人工真皮とPL(血小板分解物)との臨床試験の先行研究データとして使用できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に論文投稿を行い、掲載料が必要となる予定であったが、掲載決定が次年度となったため、投稿費を次年度に使用することとなった。また、今年度購入予定であった消耗品について、試薬などの期限の関係から次年度購入予定とした。
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次年度使用額の使用計画 |
論文掲載料、及び消耗品(物品費)としてしようする予定である。
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